キオクシアは2月10日、同社四日市工場(三重県)と北上工場(岩手県)において1月下旬より一部操業に支障が出ていることを公表した。

3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH」の特定の生産工程における不純物を含む部材(それが何かは非公開)が起因と想定されるとしている。2次元NAND型フラッシュメモリの出荷には影響がないというから、3次元NANDを製造するためにだけ使われている特殊材料が汚染されていた模様である。

このトラブルで、バイト数量にして6.5EB(エクサバイト)分の3D NAND製品が影響を受けているとWestern Digitalは、初期的な推測を2月9日(米国時間)に公表した。キオクシアからはこの種の発表は今のところ出されていない。

第2四半期の販売価格予測をTrendForceが上方修正

このキオクシアのトラブル以前、台湾の半導体市場調査会社であるTrendForceは、「2022年のNAND市場は、年間を通じてわずかに供給過剰になり、第1四半期から第2四半期までの平均販売価格は下落する」との予測を出していた。

しかし、先般、中国の西安で発生したパンデミックによるSamsungのNAND工場の操業率低下によってNAND価格が上昇したことを考慮すると、キオクシアの今回の問題の影響も大きいと見られることから、TrendForceは2022年第1四半期の値下げ幅を従来の前四半期比8~13%減からは同5〜10%減へと上方修正している。また、2021年第3四半期のキオクシアならびにWestern DigitalのNANDシェア合計は32.5%であったことを考慮して、2022年第2四半期におけるNANDの平均販売価格を従来の同5~10%下落から同5〜10%上昇に上方修正している。

  • NAND市場予測

    自社ブランドNAND市場における販売価格の前四半期比増減率の予測 (出所:TrendForce, 2022年2月)

TrendForceの調査によると、Western Digitalが発表した不良ビット数量(6.5EB)は、第1四半期の出荷分の13%を占め、年間の総出荷数量の約3%を占めていると見られるという。ライン全体がいつ通常の生産状態に戻れるかはまだ確認されていないほか、Western Digitalが単独で発表した損害数量は、キオクシア分の損失を考慮していない可能性があることに注意する必要があるという。

スポット価格が上昇の可能性

TrendForceによると、キオクシアとWestern Digitalは、PCクライアントSSDおよびeMMCに注力しており、中でもWestern DigitalはクライアントSSDおよびeMMC市場でそれぞれ世界第2位および第1位のサプライヤであり、今回のトラブルで供給が不足することが懸念される。

そのため、第2四半期にPCメーカーの生産需要が下方修正された場合であっても、クライアントSSDの価格が下落しない可能性があるとTrendForceは見ている。また、エンタープライズSSDに関しては、キオクシアのPCIe 4.0製品は多くの顧客によって検証されていることもあり2022年の同社の市場シェアは当初増加すると予測されていた。しかし、今回のトラブルは、キオクシアの製品出荷に影響を与え、その後の顧客調達にも影響を及ぼす可能性もあることから、エンタープライズSSD製品の価格下落は少なくとも第2四半期中は抑制される見込みだという。

さらに、スポット市場も買い手、売り手ともに今回のトラブルによる影響を十分に把握できておらず、ほとんどの場合、見積もり発行を一時停止することで対応している状況だという。ただし、TrendForceは、今回のトラブルは明らかにスポット価格の上昇を刺激すると見ているほか、大口契約価格については、すでに交渉済みの注文は影響を受けないものの、2月および3月のウェハの見積もり額は値上がりする可能性があるとTrendForceは見ている。

なお、台湾のハイテクメディアDigitimesは、キオクシアが2022年4月以降の3D NANDの出荷数量を絞ると顧客に伝えたとの顧客情報を2月11日付けで報じているほか、韓国半導体関係者は、キオクシア・WesternDigitalの一部操業停止により、IntelからNANDビジネスを買収しシェアを伸ばそうとしているSK HynixやSamsungのシェアが一時的に伸びるのではないかとの見方を有力視している。