東京大学(東大)は2月8日、ポリフェノールの付着性を利用し、その一種であるタンニン酸に銀イオンを組み合わせた、付着性に優れた抗菌・抗ウイルスコーティングを開発したと発表した。

同成果は、東大大学院 工学系研究科のジョセフ・J・リチャードソン外国人特別研究員、江島広貴准教授らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

傷や汚れを防ぐために物体表面に膜を形成するコーティング技術はさまざまな分野で用いられているほか、食べこぼしが衣服に付着し、なかなか落ちない、という事象もコーティングとして知られている。中でもチョコレートやワインなどは、ポリフェノールが高い付着性を有しているため、落とすのに手間がかかる。そうしたポリフェノールの特性を活用したコーティング技術を研究してきたのが、江島准教授らの研究チームだという。

今回の研究では、植物性ポリフェノールの一種であるタンニン酸と銀イオンを組み合わせることで、さまざまな素材の表面に無色で丈夫なナノコーティングを生成することに成功。その被膜の厚みは10nmほどで、銀-タンニン酸からなるコーティングは絹、綿、ポリエステルのいずれにもよく付着し、洗濯しても剥がれ落ちることなく、その抗菌活性を失うこともないことが確認されたという。

また、このナノコーティングを衣服に施すことで消臭効果を付与できることが、におい識別装置を用いた実験から確認。さらに、抗菌性については、コーティングを施した布がシャーレ上で大腸菌と黄色ブドウ球菌に対して示す阻止円の大きさを計測して評価されたほか、抗ウイルス性に関しては、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と似た構造を持つ安全な代替エンベロープウイルスを用いたプラーク法による感染価測定により評価。タンニン酸単体やほかの金属イオン(銅、鉄、亜鉛、アルミニウム)と複合化させた場合と比べて、銀-タンニン酸複合膜では、ウイルスの感染価は100分の1以下まで低下することが確認されたとする。

なお、研究チームによると、今回のコーティング被膜は安定で、浸漬法やスプレー法によってさまざまな材料表面に形成させることが可能であり、衣服をはじめとするさまざまな材料表面に抗菌性・抗ウイルス性を付与するための有効な手法となることが期待されるとしている。

  • コーティング技術

    銀イオンとタンニン酸で繊維をコーティングすると、抗菌・抗ウイルス性を付与することができる。コーティング被膜の厚みは10nm程度であり、無色透明。タンニン酸の材料表面への高い付着性のため、洗濯しても剥がれることなく効果が持続する (出所:東大プレスリリースPDF)