東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)は2月9日、宮城県で2013年から実施している長期健康調査の一環として2021年7月から11月に、約3000人に対して新型コロナウイルスの抗体検査を実施したところ、2回目のワクチンを接種した月で抗体量は最大値を示した後、減少傾向となり3か月経過あたりで、抗体量が半分程度となること、ならびに性別、年齢、飲酒、喫煙が抗体量の多寡と関連していることを確認したと発表した。

今回の調査では、2021年7月15日~11月2日までの期間に宮城県7か所に設けた地域支援センターに来所し、新型コロナウイルスの抗体検査を受けた27~94歳(平均65.0歳)の3008名に対して、抗体量を測定し、その要約統計量を求めたほか、自記式調査票から、新型コロナワクチン接種の有無および接種年月の情報を取得した。抗体の有無を判断する陽性の判断(PCR検査や抗原検査の陽性とは別の意味。抗体が陽性であったとしても、感染防御能が十分であるということにはならない)は「抗体量≧0.8 U/ml」を用いたとする。

  • 新型コロナ

    抗体検査参加者の年齢、性別、調査月 (出所:東北大プレスリリースPDF)

  • 新型コロナ

    調査票によりワクチン接種状況が判明した人の抗体陽性率と抗体量 (出所:東北大プレスリリースPDF)

調査票から判明した確実に2回接種したのは2168人で、そのうち1人を除いて抗体を有している(陽性)であることを確認したが、今回の調査では実際に新型コロナに罹患したかどうかの情報は取得していないという。

ワクチン接種と採血時期の関係と、測定された抗体量の関係を調べたところ、2回目を接種した月で抗体量が高くなり、その後減少傾向となっていることが判明したほか、性別、年齢、ワクチンの2回目接種からの経過月数、飲酒、喫煙が抗体量に統計学的に有意な影響を与えていることが判明したとする。具体的には、女性は男性に比べ1.35倍抗体量が多いこと、年齢が1歳増すと抗体量は0.98倍、5歳増加で0.90倍、ワクチン2回目接種から1か月経過で抗体量は0.80倍、3か月経過で0.50倍、1日2合以上の飲酒を行う人は飲酒をしない人に比べ抗体量が0.80倍、1日に1~20本のタバコを吸う人は喫煙しない人に比べ抗体量が0.74倍になっていたという(1日20本以上の喫煙者はp-value>0.05のため今回の解析の対象外)。

  • 新型コロナ

    2回目接種翌月~3か月参加者の性別・年齢・BMI・飲酒・喫煙・既往歴と抗体量との関係を重回帰分析した結果 (赤字:p-value<0.05、青字:p-value<0.10。飲酒量:日本酒1合(180ml)あたりのアルコール量23g換算 (出所:東北大プレスリリースPDF)

研究チームでは、特にワクチンの2回目接種から3か月経過あたりで抗体量が半減していることには留意する必要があるとしている。

  • 新型コロナ

    2回目接種翌月~3か月参加者の性別・年齢・飲酒・喫煙と抗体量との関係のまとめ (出所:東北大プレスリリースPDF)

なお、研究チームでは今後も継続して時間経過に伴う抗体量の変化についての調査を継続するとともに、同一対象者による時間経過と抗体量との関連なども検討していきたいとしている。

また、ワクチンの3回目接種を行った人に対して性別や年齢、基礎疾患の有無などによってどの程度抗体量が上昇するのかについても明らかにするとともに、接種直後からの時間経過によってどのくらい抗体量が減少していくかについても検討するとしている。

さらに、これまでに新型コロナに罹患されたかどうかの情報を収集することも検討し、感染した人はどのような人か、どのような人が重症化し後遺症が残りやすいのか、年齢や性別のみならず生活習慣などの影響についても検討するほか、ワクチン接種についても同様にその種類や副反応に関する情報も集める予定だとしている。