東日本電信電話神奈川事業部(以下、NTT東日本)は2月9日、神奈川県内で畜産業を営む臼井農産および長崎牧場、日本電信電話アクセスサービスシステム研究所(以下、NTT AS研)と連携して、「スマート畜産」の普及に向けた無線通信環境の通信品質に関する実証実験を開始したことを発表した。同実証では「IEEE 802.11ah(Wi-Fi HaLow)」の活用を目指すという。

  • 実証フィールドのイメージ

NTT東日本はICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)機器を活用した「スマート畜産」の普及に向けて、既存設備でも容易に導入が可能なシステム構成を基本としたさまざまな実証実験に取り組んでいる。

その中で今回は、各種システムを運用するために必要な通信領域を高品質かつ安定して提供できるよう、アクセス通信技術の専門ノウハウを有するNTT AS研と共同で、畜産現場でプラチナバンドのIoT(Internet of Things)向けWi-Fi「IEEE 802.11ah」の活用有無を検証する実証実験に取り組むとのことだ。

同規格は920メガヘルツ帯など1ギガヘルツ以下の周波数を利用する通信手段のひとつであり、特にIoTの通信システムとして広い分野での活用が見込まれる新しい種類のWi-Fi規格だ。Wi-Fiの伝送エリアが拡大できる上、端末からアクセスポイント、クラウドまでエンド・ツー・エンドで利用者が自由にネットワークを構築可能な特徴を持つ。

  • IEEE 802.11ahの概要

具体的な実証内容は、「IEEE 802.11ah」を活用して現在のLPWA(Low Power Wide Area)よりもさらに大容量のデータ収集を目指すものだ。また、サービス運用に必要な「IEEE 802.11ah」特性を各ユースケースで獲得することを狙うという。将来の電波法令改正における技術的な条件を見越したパラメータを適用して、実用性を確認する。なお、「IEEE 802.11ah」の導入や運用にあたっては、同規格の国内利用実現に向けて活動しているIEEE 802.11ah推進協議会と連携しているとのことだ。

広域であり建屋が屋外に並ぶ環境において、最大距離が数100メートルから1キロメートル程度の「IEEE 802.11ah」を使用することで、カメラやセンサーなどのモニタリング機材を設置できるエリアを拡大できることが期待される。

  • IEEE 802.11ah送受信機のイメージ

従来のWi-Fiと比べて「IEEE 802.11ah」はカバーエリアが広がるため、中継器や無線LAN親機を減らすことにもつながりコスト低減にも寄与する。また、従来のWi-Fiと同様にIPベースで動作するためIP通信機器に対する親和性が高く、従来の機材をそのまま活用可能なので導入しやすい利点を持つという。