大日本印刷(DNP)は2月8日、ヒトiPS細胞より創生した小腸の立体臓器モデル「ミニ腸」を用いた三大栄養素(糖質・タンパク質・脂質)の吸収評価において、その有用性を確認したと発表した。

同成果は、DNPと、国立成育医療研究センター研究所 生殖医療研究部の阿久津英憲部長らの共同研究チームによるもの。詳細は、栄養学に関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Nutrients」に掲載された。

機能性表示食品などの開発における重要な評価項目の1つに栄養吸収があり、従来、その機能性検証にはマウスやラットなどの実験動物が用いられてきた。しかし、近年、動物福祉の観点から食品分野での動物実験が禁止される傾向にあること、ならびに動物実験の結果が必ずしもヒトにそのまま反映されるとは限らないという問題もあり、ヒトの栄養吸収や吸収過程における食品成分の影響は明確に解明されていないという指摘もなされている。

こうした課題解決を目指し、研究チームは今回、ヒトiPS細胞から生成された「ミニ腸」を用いて三大栄養素の吸収機能の解析を行い、新たな吸収評価ツールとなるかどうかの調査を行ったという。

ミニ腸は生体に類似した立体構造を持ち、形状を維持したまま、さまざまな機能性物質を作用させることが可能であることが分かっている。今回の研究では、蛍光標識された三大栄養素を吸収させたうえで、糖質の吸収抑制効果がある成分をミニ腸に作用させたところ、糖質の吸収が抑えられることが確認されたという。ちなみに、ミニ腸の大きさの測定には、同社が開発したAIベースの測定ソフトを用いたという。

  • ミニ腸の吸収測定

    吸収測定の模式図 (出所:DNP Webサイト)

今回の成果を踏まえ同社では今後、ミニ腸の栄養吸収機能を活かして、食品成分の吸収評価や新規探索など、栄養分野に応用するための多様なニーズを収集し、さらなる開発を進めていくとしているほか、ミニ腸を多種多様な企業・団体の研究開発向けに評価ツールとして提案するなど、新たな代替技術として推進していくとしている。

  • ミニ腸の吸収反応

    ミニ腸を用いた標識試薬(緑)の吸収反応の観察画像 (出所:DNP Webサイト)