新型コロナウイルス感染症ワクチンの3回目接種をすると、抗体価は2回目接種直後の平均2.3倍、2回目から約6カ月後と比べると約28倍も上がることが、藤田医科大学の研究グループの追跡調査で明らかになった。2回目から約6カ月後の抗体価は接種直後の約10分の1まで低下していた。3回目接種については海外の研究で発症や重症化を防ぐなどの効果が報告されているが、日本での情報は限られていた。現在、欧米諸国などと比べて遅れている3回目接種率を早く高める必要があることを示す分析データだ。
藤田医科大学大学院保健学研究科の藤垣英嗣准教授や山本康子准教授、斉藤邦明教授らの研究グループは、同大学の教職員198人(男性62人、女性136人)を対象に、新型コロナワクチン(ファイザー社製)を2回接種後に3回目を接種する「ブースター効果」を確認する追跡調査を実施した。
抗体価は(1)ワクチン接種前、(2)1回目接種約14日後、(3)2回目接種約14日後、(4)2回目接種約70日後、(5)2回目接種約6カ月後、(6)3回目接種約14日後――の計6回調べた。このほか、教職員3325人(男性1176人、女性2149人)人を対象に2回目接種後の抗体価の変化も調べた。
その結果、2回目接種から約6カ月後の抗体価の平均値は、2回目接種直後に比べて約10分の1に低下していた。しかし、3回目接種により抗体価は大幅に上昇。2回目接種後に比べると2.3倍、2回目から約6カ月経過した3回目接種前と比べると27.9倍も上昇していることが分かった。
2回目を接種してから1カ月程度の人の抗体価は高いレベルに維持されていたが、性別にかかわらず接種してから日数が経過するほど抗体価が低い人が増えることを確認できたという。
厚生労働省は昨年11月、3回目接種は2回目から原則8カ月以上間隔を置く方針を決めた。しかしオミクロン株の国内拡大が分かり、12月に医療従事者や高齢者施設入所者らに限って間隔を6カ月、その他の高齢者は7カ月に短縮する方針に変更した。さらに今年1月に入って3月以降は全ての高齢者を6カ月に、一般の人も7カ月にすることを決めた。
ところが1月以降3回目接種は進まず、同省によると2月7日時点で全人口の約6%程度。岸田文雄首相は7日の衆院予算委員会で、3回目接種を1日100万回実施するとの目標を今月後半に達成できるとの見通しを示した。これまでは多くても1日50万回に達していなかった。
藤田医科大学の研究グループは、今回調査対象になったファイザー社製だけでなく武田・モデルナ社製でも3回目接種によるブースター効果があるとの報告がある、とした上で「2回目接種後の日数が経過するほど抗体価が低い人が多くなる。このため、半年以上経過した人はできるだけ早く3回目接種をすることで、オミクロン株発症や重症化予防効果を高めることができる」と指摘している。
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