Commvault Systems Japan(Commvault)は2月8日、クラウドベースでバックアップシステムを提供する新製品「Metallic BaaS(Backup as a Service)ソリューション」(Metallic、メタリック)の提供を発表した。同日には製品の詳細とともに、同社のビジネスアップデートについて解説するプレス向け発表会が開かれた。
Metallicは、「Microsoft Azure」をプラットフォームとしてCommvaultのバックアップやリカバリのソリューションをSaaSで提供する製品だ。2019年10月にCommvaultの社内ベンチャーが米国でサービスをリリース開始し、アジアでは2021年10月からサービス提供がはじまり、現在は30カ国で利用されている。今後、日本ではパートナー企業経由で同製品を提供していくという。
Metallicでは、WebベースのコンソールからSaaSアプリケーション、エンドポイント、ファイルサーバー、DBサーバー、クラウドストレージ、仮想マシン、Kubernetesなど、さまざまなワークロードを一括管理し、各ワークロードからバックアップを取ることができる。
システム管理者向けコンソール画面では、ユーザー管理やレポート機能など、バックアップの詳細な設定や設定変更が可能だ。一般ユーザー用のコンソール画面も用意されており、エンドポイントのデータやExchangeメールのセルフリカバリ機能などを提供している。
SaaSアプリケーションは、Microsoft 365(Office 365)、Microsoft Dynamics 365、Salesforceに対応している。なお、SaaSアプリケーションのバックアップでは、無制限のストレージ容量と無期限のデータ保持期間が提供される。エンドポイントのバックアップでも無制限のストレージ容量のほか、1年間のデータ保持期間が提供される。保持期間については、延長することが可能だ。
VMware、コンテナ、データベース、ファイルサーバーなど、仮想化環境や物理マシンのバックアップ保存先としては、サービス内で提供する標準ストレージ「Metallic Cloud」のほか、企業がすでに利用しているBYOストレージを利用することができる。このほか、Active Directory、Azure Active Directoryのバックアップも取得できる。
Metallic事業本部長の松澤正芳氏は、サービスの利用例について、「Metallicが推奨する構成をエキスプレス設定として提供しており、同設定を活用すれば数分でバックアップを実施することができる。オンプレミスでファイルサーバーからクラウドストレージにバックアップを行ったり、Azure上で利用している仮想マシンからAzureのストレージにバックアップしたりするほか、BYOストレージからMetallic Cloudに二次バックアップするといった使い方も可能だ」と説明した。
また、今回はMetallicとは別に、既存のCommvaultユーザー向けのクラウドストレージサービス「Metallic Cloud Storage Service」も提供されるという。
セキュリティ対応について、Metallicではマルチレイヤ―セキュリティーを採用している。バックアップやリストアの際にはデータに暗号化が施される。仮想エアギャップにより、論理的に隔離されたセキュリティドメインにバックアップデータを保存するなど、外部から攻撃や削除を受けない設計になっている。
Metallicのコントロールプレーンでは多要素認証を採用しているため、バックアップやリストアの際には、認証サーバへのアクセスと認証が必要となる。また、ゼロトラストアーキテクチャの考え方を採用しており、管理者でもデータの削除・改変が行えない仕様になっており、管理者の操作はすべて記録される。そのうえ、GDPR、ISO27001、SOC2 Type II、FedRAMP Highなどグローバルなデータ保護規制に対応している。
「Azure Blob Storage上にデータが保管され、データは書き換えることはできないため、イミュータブル(書き換え不可能)なデータバックアップが実現している。Metallicのシステムを攻撃するなら、まずAzureに侵入し、その後にMetallicのコントロールプレーンを乗っ取る必要があるが、現実的には不可能だ」と松澤氏は語った。
Metallicは月額のサブスクリプションモデル(年間契約)でのサービス提供となる。Microsoft Azureの利用にあたって別途契約は必要ない。SaaSアプリケーションやエンドポイントで提供される容量無制限のストレージも、追加料金を支払わず使用できる。提供価格(参考価格)は以下となる。
Commvaultの日本におけるビジネス戦略およびビジネスアップデートについては、カントリーマネージャーの倉橋秀則氏が発表した。今後は、業種別の担当営業やパートナー担当の拡充といった日本法人の体制強化に加え、グローバルで掲げるメッセージ“The Power of AND”の価値訴求・ブランディング、パートナー支援プログラムの提供、パートナーとの共同ソリューションの開発・展開、日本語コミュニティサイトの情報発信とコンテンツの拡充を進めるという。
倉橋氏はMetallicについて、「北米をはじめ、既存のリリース地域では、クラウドなどへ管理の幅を広げたい既存ユーザーの利用が先行し、アドオンで採用するケースが多かった。日本においては今後、コア製品からMetallicへの切り替えのプログラムなども検討していきたい」と語った。