東京理科大学(理科大)は2月1日、「ルブレン単結晶基板」(RubSC)上にルブレン誘導体「ビス(トリフルオロメチル)ジメチルルブレン」(fmRub)をエピタキシャル成長させた薄膜を作製し、fmRubがRubSC上で「準ホモエピタキシャル成長」していることを実証したこと、ならびに準ホモエピタキシャル成長を利用することで、異なる有機分子間でも結晶性の高い界面を形成できることを解明し、下層のRubSCから上層のfmRubに向かって電子移動が起こることを明らかにしたと発表した。
同成果は、理科大 理工学部 先端化学科の中山泰生准教授らの研究チームによるもの。詳細は、「The Journal of Physical Chemistry Letters」に掲載された。
有機半導体デバイスは複数の材料が必要となるため、異種材料が形成する界面の整合性が重要とされているが、材料ごとにそれぞれ固有の結晶格子を有しているため、いかに層間の結晶格子のずれを小さくするかが高性能なデバイス開発への課題となっている。
そこで研究チームは今回、RubSCとその誘導体であるfmRubを組み合わせるという手法に注目したという。RubSCは多環芳香族化合物の1つであり、電荷キャリア移動度が高い代表的なp型有機半導体材料として知られている。一方のfmRubは、正孔と電子の両方に対して高い移動度を持つ両極性輸送挙動を示すことが知られている。これら2つの化合物は互いにわずかに異なる結晶格子を有しており、かつ柔軟な有機分子であるため、それらの界面がどのように形成されるのかに着目して、研究を進めることにしたという。
RubSC上に形成されたfmRub薄膜の結晶性の評価から、fmRub層がRubSCの(100)面に対して、(001)方向に成長したことが確認されたほか、fmRub層が単結晶ではなく、面外方向にドメイン境界もしくは複数の結晶相を含んでいること、fmRubがRubSCの(100)面上でエピタキシャル成長していることなどが確認された。また、fmRubの結晶格子はRubSCの結晶格子とほぼ一致し、結晶格子のずれは0.005nm、0.02°未満であることが判明したほか、fmRubがRubSCの(100)表面で準ホモエピタキシャル成長をしていることが結論付けられたともする。
さらに、薄膜表面の電子状態の評価からは、RubSCからfmRubに向かって電子移動が生じていることが確認されたほか、RubSCからfmRubへの上方へのバンドの曲がりが生じていることもわかったという。これは、おそらくRubSCからfmRubへのわずかな電子移動の発生によって引き起こされたものと考えられると研究チームでは説明している。
今回の研究成果について、中山准教授は「分子結晶の界面について、結晶構造が近い材料を組み合わせたらどのような結晶成長が起こるのか、界面の結晶の質は良くなるのか、などの疑問を解決したいというのが今回の研究における個人的な動機でした。有機半導体の特性を利用すると、透明フィルムや布地に半導体デバイスをプリントして持ち運んだり身に付けたりすることが可能になります。今回の成果を太陽電池に応用すると、ストレスなく身に付けられ、どこでも高効率に発電できるので、充電を必要としない生活が実現するかもしれません」とコメントしている。