1921年に創業し、昨年100周年を迎えた小松製作所(以下、コマツ)。建設・鉱山機械の製造・販売を中心に事業展開する同社では、性能の決め手となる主要コンポーネント(エンジンや油圧機器、トランスミッションなど)を自社開発している。
その設計品質は、コマツの成長期を支えてきたベテラン技術者の経験やノウハウによって担保されてきた。近年、この暗黙知をいかに次代の若手に継承していくかが課題となっている。
そこでコマツでは、ベテラン設計者の知見を可視化・整理し、デジタル化することで誰でも活用できるようにするべく、設計プロセスの改革を進めているという。
「改革でいちばん大事なのはシステムを導入することではなく、設計の現場で働いている一人一人の意識の変化、マインドチェンジにある」――そう語るのは、コマツ 開発本部 油機開発センタ GM 名倉忍氏だ。
1月19日に開催されたオンラインセミナー「コマツの設計プロセス改革 ~設計DX実現に向けた技術・ノウハウのデジタル化~」では、この名倉氏が登壇。現在コマツが進めている設計プロセス改革の取り組み内容について、事例を交えて説明した。
鍵は「タテ」と「ヨコ」のデジタル化
コマツではかねてより、建設現場のあらゆる情報をICTでつなぐソリューションとして「スマートコンストラクション(SMART CONSTRUCTION)」を提供している。その目的は、現場の課題を解決し、安全で生産性の高い“未来の現場”を実現していくことだ。
一般に、施工は「調査・現況測量」「施工計画作成」「施工・施工管理」「検査」といった流れで進められるが、スマートコンストラクションでは、これらの各プロセスをそれぞれデジタル化していく。例えば、従来人が現場を歩いて行っていた測量はドローンによる3D測量に置き換え、施工計画は二次元の図面ではなく、3Dで作成してシミュレーションを実施する……といった具合だ。コマツでは、こうした各プロセスのデジタル化を「タテのデジタル化」と呼び、デジタル化されたプロセスをつなげていくことを「ヨコのデジタル化」と呼ぶ。
名倉氏は、「『タテ』と『ヨコ』のデジタル化により、施工全体を最適化することが施工のDX。このタテとヨコのデジタル化が、設計のDXにおいてもキーワードになる」とした上で、油機開発部門の設計プロセス改革を紹介していった。