新型コロナウイルスのオミクロン株に感染して入院した人の約6割がワクチンを2回接種済みだったことが、国立感染症研究所(感染研)の分析で分かった。2回の接種だと現在国内でまん延している同株の感染防止には不十分であることを具体的な数字で示した形だ。海外の研究データでは3回接種をすると抗体価が上がることを示しており、欧米諸国と比べて遅れている国内3回目接種の進ちょくが待たれる。

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    国立感染症研究所が分離したオミクロン株の電子顕微鏡画像(感染研提供)

感染研は昨年11月29日~今年1月12日に国内の15病院に入院した0歳から78歳までの122人を対象に分析した。内訳は男性79人、女性43人。年代別では40代(26人)、20代(23人)が多かった。60歳以上は10人だった。

分析の結果、122人のワクチン接種歴では「2回目終了」が77人(63.1%)で最も多く、次いで「接種なし」が40人(32.8%)。3回目を既に受けながら感染した人も3人、1回目だけの人が2人いた。2回接種者のワクチンの種類は、ファイザー社製44人、モデルナ社・武田薬品工業製が25人、アストラゼネカ社製6人、不明2人。

入院時に何らかの症状があったのは93人(76.2%)。無症状は29人(23.8%)だったが入院後に4人は症状が出た。主な症状は37.5度以上の発熱や、せき、喉の痛み、鼻水で、嗅覚障害は2人、味覚障害は1人と少なかった。122人のうち107人が胸部レントゲンやCTの検査を受け、7人は肺炎像が見つかった。重症者や亡くなった人はいなかったという。

また、122人のうち何らかの基礎疾患を持っていた人は30人で比較的少なく、高血圧14人、脂質異常症9人などだった。治療の内容は抗体薬「ソトロビマブ」、「イムデビマブ」投与がそれぞれ16人、4人。その他抗ウイルス薬「レムデシビル」や抗菌薬などの投薬治療を受けたのは21人。101人は対症療法だけだった。

肺で増加しにくい傾向が判明

感染研はこの分析とは別に、ヒトの細胞培養実験やハムスターを使った動物実験の結果から、オミクロン株はデルタ株と比べ肺では増えにくい傾向があることなどを確認している。

公表データによると、ヒトの気管支と肺の細胞培養実験でデルタ株とオミクロン株の複製(増加)具合を調べた。すると、同株はデルタ株など従来株と比べ、気管支組織で早く増加し、肺の組織ではあまり増加しなかったことが判明。感染研は「オミクロン株は上気道で高い増加能力を持ち、このことが高い伝搬力(感染力)に寄与していると考えられる」としている。

またハムスターの実験を行った結果、オミクロン株はデルタ株と比べ、体重減少や症状(活気や頻呼吸など)、鼻腔・気管・肺のウイルス量など「傷害指標」が顕著に低く、病原性は低いことが示された。伝搬感染実験ではオミクロン株はデルタ株より顕著に高い感染力があることを確認したという。

オミクロン株は感染力については米疾病対策センター(CDC)が1月初めに「デルタ株より最大3倍強い可能性がある」との見方を公表しているが、感染力の強さについては他の推定値も出されており、公式には確定していない。

厚生労働省が1月31日に公表した入院治療が必要とされた人は5万8000人を超えており、感染研の分析結果から2回目接種を終えた人が多いと見られている。

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    入院治療が必要とされる人数の推移を示すグラフ(厚生労働省提供)