人間文化研究機構 総合地球環境学研究所(地球研)と、HORIBAグループで分析サービス事業を担う堀場テクノサービスは、軽石の分析に関する共同研究を2月1日より本格的に推進することを発表した。
2021年8月に小笠原諸島の海底火山噴火により噴出した軽石は沖縄県をはじめとした日本各所に漂着し、漁業や環境に深刻な影響を及ぼしており“軽石問題”として不安視されている。
36年前(1986年)や約100年前(1914年)にも同様の現象が起きており、繰り返し起こっていることからこの問題の解決に向けて地球研と、多種多様な分析サービスを手掛ける堀場テクノサービスが手を組み、共同研究を実施することになったという。
堀場テクノサービスは小惑星探査機「はやぶさ2」が採取した小惑星「リュウグウ」の試料分析に参画した実績を持つ。
具体的な取り組みとしては、全国の自然科学系博物館およびジオパークを束ねる事務局などを通して、地域の学芸員などの協力により軽石のサンプルを収集し、地球研に集約。
収集した軽石は、HORIBA製品で研究機関での使用実績も多数有する蛍光X線分析装置「XGT-9000」を用いて、軽石に含まれる元素の種類や量などのデータを測定する。
軽石を設置する治具は、堀場テクノサービスが独自開発し、形や大きさが異なる軽石の上面を均一に固定するとともに、余分なX線の入射を防ぐ構造により、複数のサンプルを高い精度で同時に分析することが可能だという。
同装置を用いることにより、非破壊・非接触かつ1回あたり数分という迅速な分析を行うことが可能だとしている。
この分析データを元に、地球研では過去に発生した海底火山噴火で噴出した軽石の化学成分(二酸化ケイ素、酸化カリウム、酸化ナトリウムなど)の含有量と照らし合わせ、収集した軽石が小笠原諸島由来のものであるかといった発生源を特定し、漂流日時などの情報を組み合わせて流路のマッピングを行い、漂流パターンの解明へとつなげることを目指す。
この共同研究を通じ、今回の軽石の由来はもとより、今後世界で同様の問題が起こった際に迅速な復興を可能とするための長期的な研究や対策の立案を行う「長期的な災害レジリエンス強化への貢献」が期待できるという。
また、地球研と堀場テクノサービス、軽石を提供する地域の方を交えた「産学民」一体の体制で、地域との交流を重視しながら研究活動に取り組むことにより、「自然災害や地球環境問題への関心・理解の深化」も目標とするとのことだ。
これらの活動を通じ、SDGs17の目標のうち「4.質の高い教育をみんなに」「11.住み続けられるまちづくりを」「14.海の豊かさを守ろう」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」といったSDGs目標達成への貢献も見据えているという。
なお、同プロジェクトのリーダーは琉球大学理学部物質地球科学科の教授で地球研 研究部の新城竜一 教授が務める。
研究期間は2~3年を想定しており、まずは日本全国ならびに軽石の漂着が確認されている台湾といった海外を含めた軽石の収集・分析によるデータの蓄積を行い、その後漂流パターンの解析に向けた研究を行っていくとのことだ。