科学技術振興機構(JST)が1月26日に開催したJST理事長記者会見の中で、経営企画部エビデンス分析室は「Hot Paperから見る最近の新型コロナ論文」と題して世界の科学技術動向について解説した。
Hot Paperとは直近2年内に発行され、直近2か月内に極めて高い被引用のある論文のこと。
同分析室は、JST内部向けに世界各国の科学技術論文の最新動向を、米国Clarivate Analyticsの「Web of Science」などを基に分析し、週に1度のペースで示唆に富む科学技術論文の分析報告をJST内のWebサイトに「社内報 プラスエビデンス」として公表している。
発行している内部向け分析報告を基に、半年ごとに各解説内容を分析し再編集した冊子「+Evidence3」「+Evidence4」がこのほど発行された。
エビデンス分析室は「Web of Scienceが紹介した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連論文では、2020年1月から2021年12月までに18万6432報と、2年間で20万部に届くような勢いで急増した」とまず報告した。
そして今回は、JSTが2021年から実施している「COVID-19に関する研究開発プロジェクトB」の「制限なく社会活動を行うための軽減策に相当する研究開発・技術開発」の視点で、各論文を調査。
「見つける」技術の視点では、「RT-PCR法」(逆転写PCR法)や「検体検出法」「LAMP法」(核酸増殖法)「バイオセンサー」「CRISPER/Cas」などの論文が注目を集めたと指摘した。「こうした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を発見・解析する分析技術・装置がCOVID-19対策などの具体的な対応策策定に大きく貢献している」と分析する。
その分析技術・装置の中でも、日本発の遺伝子増幅法であるLAMP(Loop-mediated isothermal amplification)が大いに注目を集めたことを、エビデンス分析室は指摘した。
LAMPは日本の臨床検査薬などの総合メーカー、栄研化学(東京都台東区)が開発したもので、標的遺伝子の有無をPCR法よりも早く判定できる点が特徴になっている。
栄研化学は、LAMPを製品化した牛胚性判別試薬キットを2002年3月に上市。その後も検出試薬キットなどを製品化し、提供し続けている。
LAMPをごく簡単に説明すると「等温(60~65℃)にすることで、遺伝子の増幅から検出までを1ステップでできる点が優れている点だと評価できる」とエビデンス分析室は解説する。
また、COVID-19の医療現場への貢献という点では「1970年ごろに医用電子機器の総合メーカーである日本光電が発明した血液中の酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターも、大きな貢献を果たしている」と指摘する。
筆者注
LAMPについて解説した論文の中で引用されている代表的なものは、通称“納富論文”とされている以下の論文と経営企画部エビデンス分析室は説明した 掲載誌:Nucleic Acids Research. 2000 Jun 15;28(12):E63. タイトル:Loop-mediated isothermal amplification of DNA 著者:T Notomi 1, H Okayama, H Masubuchi, T Yonekawa, K Watanabe, N Amino, T Hase