テクノロジーとデータを活用して、着実にDXを進めている東京海上グループ。同社はインフラ戦略、データ戦略、組織・プロセス戦略の3つを次世代フレームワークに位置付けてDXに取り組んでいる。

12月9日、10日に開催された「TECH+EXPO 2021 Winter for データ活用 データが裏づける変革の礎」に、東京海上日動火災保険(以下、東京海上日動)IT企画部 部長 兼 東京海上日動システムズエグゼクティブオフィサー デジタルイノベーション本部長の村野剛太 氏が登壇。東京海上グループにおけるDXの取り組みについて講演を行った。

「守り」と「攻め」のデジタル戦略

東京海上グループは、国内損害保険事業、国内生命保険事業、海外保険事業、金融・一般事業という4つを軸として幅広く事業を展開する企業である。世界に展開する252の子会社と、22の関連会社で構成されており、中でも中核を成す東京海上日動は、約140年前に誕生した日本で最も古い保険会社の1つであり、かの渋沢栄一が設立した会社の1つでもある。

そんな東京海上日動のIT企画部の部長を務めるのが、本講演に登壇した村野氏だ。同氏は同時にシステム企画開発支援を担うグループ会社・東京海上日動システムズのエグゼクティブオフィサーも務めている。

村野氏は東京海上グループのデジタル戦略について、大きく2つに分類して説明する。

まずは「守り」のデジタル戦略――すなわち「社内体制の変革」である。これにより、生産性を高め、クリーンな経営体制を実現することを目指している。

具体的には、リモートワークやオンライン営業の推進、ペーパーレスやAI・RPAの活用による業務プロセスのデジタル化などが挙げられる。また、デジタル人材の採用や育成強化、新しい働き方の推進や、挑戦・変革を志す企業文化の醸成なども「守り」のデジタル戦略の一角だ。

一方で「攻め」のデジタル戦略となるのが、「“価値提供”の変革」である。こちらは、新たな成長の種を創出し、課題解決力を強化することが大きな目的だという。

具体的には、デジタルを活用した顧客接点の強化や、保険コア機能のCXをデジタルで徹底的に磨き上げること、防災や減災につながる新たな商品・サービス、ソリューションを開発することなどが「攻め」のデジタル戦略にあたる。

  • 東京海上グループのデジタル戦略

DX実現に向けた次世代フレームワーク

村野氏はさらに、東京海上グループが目指す姿を実現するために構築したという次世代フレームワークについても説明した。同フレームワークは、3つの戦略で構成される。

まず、インフラ戦略だ。同戦略では、SoE/SoR/SoIという3つの領域の役割と目指すべき方向性を明確に定め、シームレスに連携できるインフラの構築を行う。次にデータ戦略として、多種多様なデータを最大限活用するためのデータ整備計画を立て、必要な体制を整える。3つ目の組織・プロセス戦略では、ビジネス部門とIT部門、法務・セキュリティ部門が一体となってスピーディーに開発するための組織・プロセスを確立する。

「これらのフレームワークの構築によって、環境の変化に対応し、システムが肥大化・複雑化するリスクを回避します」(村野氏)

講演ではさらに、それぞれの戦略について、より掘り下げた内容が語られた。