IDC Japanは1月27日、2021年9月末時点の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響を考慮した国内IT市場 地域別予測を発表した。

  • IDC、コロナの動向を踏まえた国内地域別IT支出予測- 大都市圏でプラス成長

    国内IT市場 地域別 支出額予測、2020年~2025年(単位:百万円)

COVID-19により2021年も小売、運輸、サービスなどの企業で深刻な影響を受けているが、消費者におけるスマートフォンの買い替え需要などに伴い、IDCは2021年の国内IT市場規模を前年比4.2%増の19兆234億円とみている。地域別でのIT市場は2021年、各地域でプラス成長に回復し、特に大都市圏(東京都、関東地方(東京都を除く)、東海地方、近畿地方)は、大企業、中堅企業における業務効率化、企業変革を目的とした積極的なIT支出の拡大を見込んでいる。

ただし、その他地域(北海道/東北地方、北陸/甲信越地方、中国/四国地方、九州/沖縄地方)では、全体ではプラス成長ながら地域経済の回復が遅れており、消費者を除いたIT支出では低い成長率に留まっているという。特に北海道/東北地方では需要を牽引するその他の産業分野が不在のため、2021年も消費者を除いた場合、マイナス成長となるとIDCは予測した。

2022年の国内IT市場は、前年比2.3%増の19兆4,548億円と予測。多くの産業分野の企業で業績は改善し、特に大企業ではDX推進のためのIT支出の本格化が見込まれるという。また、ワクチン接種によりCOVID-19の影響が低下することから、これまで影響を大きく受けた小売、運輸、および外食、観光、宿泊などのサービスではIT支出は緩やかながら回復を見込んでいる。

地域別では、大都市圏での2022年のIT支出はプラス成長を予測。2023年以降も大都市圏を中心に堅調なIT支出を見込み、特に2025年に大阪・関西万博を開催する予定の近畿地方でIT支出は拡大を予測した。一方で、大都市圏以外の地域では各地域でCOVID-19の影響が長期化し、2022年のIT支出はほぼ横ばいに留まるとIDCはみている。2023年以降、業績が改善する企業が徐々に増加しIT支出も改善傾向を見込んでいるものの、人口減少によって地域経済の停滞が長期化することから、多くの企業においてIT支出は抑制傾向が継続するという。ただし、これら地域でも地方自治体の「デジタル・ガバメント」施策が期待され、九州/沖縄地方での福岡市周辺における積極的な投資が牽引しているほか、今後は北海道/東北地方において札幌市、仙台市での再開発事業が契機となり、これらの地域ではIT支出の活性化が見込まれるということだ。

IDC Japan ITスペンディングのリサーチマネージャーである市村仁氏は、「ITサプライヤーにとって、大都市圏以外の地域の企業に対して、デジタルを活用した事業構造の変革としてのDXを支援することがIT支出拡大の鍵になる。現在地方自治体における『デジタル・ガバメント』施策、各地域での再開発事業などを契機として、地場の企業に対してDXの推進支援を積極的に誘導する体制を早期に整備することが求められる」と分析している。