アビームコンサルティングと日本総合研究所(日本総研)は1月26日、オンラインで企業のGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた提言に関する記者説明会を開催した。
GXは、企業におけるGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)の排出源である化石燃料や電力の使用を再生可能エネルギーや脱炭素燃料に転換することで、社会経済を変革させることを指す。
昨今、カーボンニュートラル(脱炭素)の実現に向けた動きがグローバルで加速する中、日本国内においても、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」の方針が提示されて以降、再生可能エネルギー電力の調達手段など脱炭素に向けた事業環境整備が進められている。
欧州グリーンディールに基づく新しい経済成長モデル
はじめに、日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 環境・エネルギー・資源戦略グループ ディレクタ/プリンシパルの段野孝一朗氏がカーボンニュートラルに関する市場動向と、企業に与える影響について解説した。
まず、同氏は「2050年までのカーボンニュートラルの議論をけん引しているのは欧州であり、2000年以降から地球温暖化、気候変動対策を進めている。2016年~2017年の時点では2050年にCO2排出量80%削減という目標だったが、2018年に一転して地球温暖化と気候変動を抑えていくためには100%削減、つまりカーボンニュートラルを実現していく必要があるという認識に変化した。一時、議論は頓挫していたものの欧州におけるCOVID-19の感染拡大に伴い、経済復興の原動力としてカーボンニュートラルによる経済復興を目指しており、この動きは世界各国に広がっている」と話す。
2018年に欧州委員会が発表した2050年までのEU長期戦略「A Clean Planet for All」では、複数の手段を組み合わせれば2050年にカーボンニュートラルは不可能ではなく、実現可能な目標であると位置付けられている。しかし、目標だけではカーボンニュートラルを実現できないことから、欧州グリーンディールに基づく行動計画が発表されている。
段野氏は「2020年1月に欧州グリーンディール投資計画が策定され、同3月には欧州気候法の制定と同産業戦略、同7月に同水素戦略、同12月に洋上風力戦略など、さまざまな個別分野の戦略が策定されており、欧州ではカーボンニュートラルを単なる気候変動対策だけではなく、新しい経済成長のモデルとして打ち出している」という。