堺市産業振興センターは1月22日と23日にわたって、同市のオープンデータポータルサイト「SAKACIL(さかしる)」を利用したアイデアソン・ハッカソンを開催した。この2日間で参加者がアイデアを出し合い、サービスのプロトタイピングまで実施するイベントだ。内閣府公認のオープンデータ伝道師として活動する福野泰介氏がファシリテーターを務めた。

なお、「SAKACIL」は国が公開しているオープンデータに基づいて、堺市内に本社を構える約2万4000社の法人企業情報を掲載しているサイトだ。オープンデータは国や地方公共団体、事業者らが保有するデータのうち、誰もが編集し再配布などできるよう無償で提供されるデータを指す。これらのデータは営利目的や非営利目的を問わずに二次利用が可能である。

  • イベント参加者の様子

アイデアソンはアイデア(idea)とマラソン(marathon)を組み合わせた造語であり、ハッカソンはハック(hack)とマラソンを組み合わせた造語。数人でチームを組み、アイデアを出しながら決められた期間内にアプリケーションやサービスの開発を目指すイベントである。今回は市内外から延べ20人ほどが参加した。

同イベントで発表されたサービスの中からいくつか紹介する。1点目は「トゥーム・クエスト」だ。これは、堺市内には多くの古墳があるものの、地元の人以外にはあまり知られていない点を課題と感じたことから着想した位置情報ゲームだという。

主人公となるプレイヤーは、市内にある古墳のうち7つを巡る。それぞれの古墳に訪れる際には「地元の和菓子を購入する」「刃物を作っている地元企業の情報を入手する」といったミッションが与えられ、達成しないと次に進めない設計になっている。「SAKACIL」に登録された企業情報と連携して、地元企業の魅力を伝える機会を狙うそうだ。

  • 「トゥーム・クエスト」の画面イメージ

2点目のサービスは、事業継承者がいない企業や個人事業主と、事業を始めたい人をマッチングする「さかいで継GO!(さかいでつごう)」だ。「SAKACIL」に登録された企業のうち、事業継承者を探している企業の情報が一覧で掲載されるサービスであり、市内の事業の継続を支援する。事業を始めたい人は気になる企業のページへアクセスし、ビデオ会議システムやバーチャル空間システムを活用して実際に打ち合わせまで実施できる仕組みだという。

  • 「さかいで継GO」のシステム概要

3点目は「さかしるさんぽ」だ。堺市は独自の歴史を持つものの認知度が低く、地域の魅力を発信しきれていない課題に対して、「散歩」を通じて知名度向上を図るサービスとのこと。特に、市内に複数存在する街道や神社に着目している。

実際に散歩する際には、マップ上から周囲の店舗情報や観光地情報を確認しながら利用できるとのことだ。Open Street Mapをベースとしており、フレームワークにはVueを、ライブラリはleafletおよびvue2-leafletを採用したとのことだ。Vercelでデプロイしている。

  • 「さかしるさんぽ」のインタフェース例

ハッカソンに初めて参加したという参加者は「タイトなスケジュールでのサービス開発は難しかった。期間内に実装しきれなかった機能も引き続きチームで開発を進めて、ぜひリリースしたい」と感想を語っていた。