ソニーは1月26日、狙った細胞を高速・高精度で分取する閉鎖型構造のセルアイソレーションシステム「CGX10」を発表した。

  • CGX10

    ソニーの閉鎖型構造のセルアイソレーションシステム「CGX10」

がんの治療方法として、手術療法、放射線療法、抗がん剤治療に続く第4の治療方法として、細胞免疫治療法が期待されるようになっている。また、がん治療のほかにも、糖尿病やリウマチなどの自己免疫疾患においても新しい治療法として注目されるようになってきている。

そうした治療法として、より高い効果を得るためには、細胞を高精度かつ高純度に分取することが求められるようになってきており、同装置はそうしたニーズに対応するべく開発されたもので、ソニーがBlu-rayのピックアップなどを中心に長年にわたって培ってきた高性能かつ高精度なレーザー技術などを応用することで、血液の中から必要な細胞のみを高純度で分取することを可能とした。

CGX10は再生医療に案連する研究、プロセス開発、製造環境において訓練を受けた実験者が使用することを目的に開発された装置で、5つの特長を有するという。

1つ目は、「滅菌状態を維持する閉鎖型構造の設計」で、独自開発の閉鎖型構造により滅菌状態を維持する設計を採用し、ガス滅菌を施した使い捨て流路を組み合わせることで、クリーンな環境下でチップ内において、細胞の解析したのち、欲しい細胞をコレクションバッグに、非必要な細胞を廃液バッグに自動で分取することを可能としたという。

2つ目は、「高速・高純度・高生存率での細胞分取」で、405nm/488nm/561nm/638nmの4つの波長のレーザーを組み合わせてT細胞など10μm~20μm程度の大きさの細胞に照射することで、散乱光などから10個のパラメータを取得し、抗原の表面状態や細胞のサイズなどを測定。ユーザーごとに設定された条件などを踏まえ、純度を優先した場合は純度約97%(1秒あたり1万5000個の分析速度の場合)、分取速度を優先する場合では1秒当たり約10万個の分析を可能とすることで、生産性の向上を図ることを可能としたとする。

  • CGX10

    レーザーが照射され、測定が行われるチップ部分

3つ目は、「高い操作性」で、医薬品製造向けクリーンルームではキーボードやマウスが使えず、かつニトリルグローブなどを付けたといった環境下であることを踏まえ、操作系をタッチパネルに集約。グローブを付けたままであっても、各種の操作を可能としたという。また、使い捨て流路の交換手順なども表示するとのことで、交換作業にかかる手間を減らすこともできるようになっているという。

  • CGX10

    グローブでの操作も可能なタッチパネル。「プロセス開発モード」と「スタンダードオペレーションモード」の2種類のモードを用意し、用途に応じて使い分けることができる

4つ目は、「単回使用の使い捨ての流路の採用」で、検体に触れる液体制御用のプラスチックチューブを含むチュービングキットとして提供することで、検体間の相互混入などを防ぐことを可能としたほか、セッティングにかかる手間の削減も可能としたという、

  • CGX10
  • CGX10
  • 使い捨て流路。組み立てられた状態で滅菌されユーザーに届けられる。0.2μmのシリンジフィルターを採用することで、滅菌後の菌の侵入を防ぐ仕組みを採用しているという

そして5つ目が「GMP(Good Manufacturing Practice)準拠の細胞製造用ドキュメンテーションのサポート」で、CoA(分析証明書)や動物由来物質不使用証明書、製品情報ファイルなど、必要とするドキュメントの提供が可能だという。

なお、同装置は、2022年秋に日本、欧州、米国で発売(受注)を開始する予定で、状況を見つつ、その他の国や地域への販売も検討していきたいとしている(販売価格はオープン価格としている)。同社では、これまで民生品で培ってきたレーザーなどの技術力に加え、ユーザビリティなどのソフト面も含め、ライフサイエンス分野に対して、使い勝手の高い、高性能・高精度な分析装置を今後も継続して提供していきたいとしている。