ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を提供するトラストバンクをグループ傘下に持つチェンジと、コニカミノルタのグループ会社であるコニカミノルタパブリテックは1月26日、記者説明会を開き、自治体向けDX(デジタルトランスフォーメーション)サービスを提供する合弁会社「株式会社ガバメイツ」(Govmates)を4月1日に設立すると発表した。今回、新会社の設立に先立ち、事業戦略が公表された。なお、新会社の本社は愛媛県松山市となる。
DXに向けて課題が山積みな地方自治体
冒頭、チェンジ 代表取締役兼執行役員社長の福留大士氏は地方自治体を取り巻く環境・社会課題について「最大の課題は人口減少社会・超高齢化であり、労働力の不足や都市部への人口流出が挙げられる。一方、地方自治体の内部環境としては職員数の減少や税収減収、ベテラン職員の知恵伝承、若手育成のニーズがかなり強くなっており、行政サービスの持続可能性が問われており、こうした課題解決を喫緊のテーマとして掲げていかなければならない」と述べた。
実際の現場ではコア業務とノンコア業務に分かれ、コア業務については自治体職員同士や自治体と企業のコラボレーションを加速させ、職員自らが業務改革を自走することが望ましく、ノンコア業務に関しては洗い出し・アウトソースにより付加価値のある業務に自治体職員の時間をシフトさせていく必要があるという。そのため、新会社では「BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)+標準化+ICT化」を掲げている。
従来からチェンジでは、官公庁に向けたAI開発の実績やさまざまなデジタル活用支援、デジタル人材育成における実績を有し、全国9割を超える1600以上の自治体との取引実績やプラットフォーム運営のノウハウを持ち、行政専用ビジネスチャット「LoGo チャット」や行政手続きデジタル化プラットフォーム「LoGo フォーム」を通じた行政DXを実現。
一方、コニカミノルタは累計120自治体の職員約20万人分、190万件の全国における自治体の業務データ蓄積・保有、業務データ分析・可視化で自治体の業務改革(BPR)の実現、業務データを活用した自治体DX支援プラットフォームを開発・提供している。
そして、これまで両社では地方自治体の業務における課題解決や標準化を支援するAIの共同開発、東京都区市町村における行政手続のデジタル化を支援している。
福留氏は「新会社では、当社が持つ人材育成、AI・自動化、自治体ネットワークとプラットフォーム運営ノウハウと、コニカミノルタの自治体DX支援プラットフォームを融合し、新会社でシナジーを発揮することで誰1人取り残さない自治体サービスを提供していく」と力を込めていた。
地方自治体を支援する3つの戦略とは
次に、コニカミノルタパブリテック 代表取締役社長の別府幹雄氏が新会社の事業戦略を紹介した。同氏は社名について「ガバメイツはGovernment(行政)とMates(仲間)を合わせた造語で、自治体に寄り添い、共に課題を解決していく真のパートナーとしての存在である意味を込めて名付けた」と説明する。
新会社のパーパスは「自治体の革新を支援し、地域間格差のない社会を創る」、ビジョンは「自治体業務と職員の働き方を、豊かでスマートに」を据えている。過去3年間は政令市や中核市を支援していたが、新会社ではこれに加えて、全国自治体の95%に相当し、DXへの投資や人材に課題を抱える基礎自治体への支援も強化する。
戦略は「地域共創パートナー戦略」「データ蓄積・活用戦略」「自治体ワンストップ化戦略」の3つとなり、これらの戦略を通じて、自治体業務の支援を推進し、地域間格差のない社会を目指す。
地域共創パートナー戦略では両社の営業基盤を活用した顧客開拓(直販)に加え、両社が保有する各地域のパートナーネットワークを強化・拡大しつつ、全国の自治体、特にその地域特有の課題を抱える基礎自治体に寄り添ったサービスやソリューションを提供する。
また、これらの地域内での協業により、地元の雇用創出などに貢献するとともに、各地域の特色を知っているパートナー企業のほか、地域の活性化を目指す企業や団体、住民を巻き込んで課題解決に取り組む。
データ蓄積・活用戦略については、官公庁や民間企業、自治体へのサービス提供で培ったノウハウによる業務量調査や、BPRを通じて蓄積した自治体業務データ、さらに自社データだけでなくパートナーが保有するデータを組み合わせて分析・活用し、自治体の業務効率化・標準化に寄与する新たな付加価値を提供するという。
例えば、スマートシティープロジェクトに強みを持つ企業が保有する地域の広範囲のデータと住民サービスの改善に取り組む企業が持つデータなどを連携させることで、ガバメイツが有する自治体業務データをベースとした業務改善に加えて、自治体が提供する住民サービスに高い付加価値を提供していくという。
自治体DXワンストップ化戦略に関しては、全国規模で展開する大手ソリューションプロバイダーから各業務領域に強いSaaS(Software as a Service)ベンダーまで、幅広い各種パートナーとの協業を強化。各自治体のDXニーズに対応し、各種サービスを組み合わせた課題解決パッケージをワンストップで提供する。
各社の強みを活かして実現された自治体の課題解決は、新会社のプラットフォーム上に改善事例として蓄積され、職員間での共有・情報収集を可能とし、自律的なDX推進を支援。その核となるのが自治体DX支援プラットフォーム「Govmates」となる。
地方発の唯一無二のプラットフォーマーに
同プラットフォームは、コニカミノルタパブリテックで培った自治体業務の整流化・標準化の手法、および累計120自治体から保有した業務データにもとづき、両社の強みを活かして業務の可視化、分析、最適化、標準化のSTEP1~STEP4まで、4つのサービスを提供する。
STEP1は可視化サービス。自治体職員へのヒアリングを通じて全庁業務量や業務フローを見える化し、業務分類や各種目別(コア・ノンコアなど)に業務データを構造化。
STEP2は業務分析サービスとなり、可視化された業務データを深堀し、分析することで、すべての業務の中から課題を抽出。両社が官公庁、大手企業、自治体などにこれまで提供していた業務改善の手法をベースに解決策を検討する。
STEP3は最適化サービスで、業務分析サービスで検討した施策に対し、具体的なソリューションを自治体に提供します。地域共創パートナー戦略で連携する協業企業とともに最適な解決策を提示するという。
STEP4は標準化サービス。両社が持つ自治体ネットワークを通じて、全国の自治体の業務フローや帳票を標準化・最適化を図ることで、システムの共同利用を実現するためのモデル構築を支援する。
Govmatesは、4月1日から4つのサービスにおいて従来から提供している全庁業務量調査に加え、新たにDX推進計画策定支援や基幹業務システム標準化のための業務フロー策定支援などのサービス提供を開始する。
また、それらのサービスを支えるLGWAN(Local Government Wide Area Network:総合行政ネットワーク)対応のクラウドツール「Govmates Pit(ガバメイツ ピット)」も提供。同ツールでは、自治体職員がクラウドにアクセスし、庁内の業務フローや手順書の一元管理が行えるほか、先進自治体の改善事例との比較ができる。
また、2021年7月にチェンジとコニカミノルタが共同開発し、β版として提供開始した地方自治体の業務標準化や課題解決を支援するAI技術「GAIA」による他自治体の改善事例の検索・閲覧を可能とし、自治体職員によるBPRを支援する考えだ。
今後のロードマップとして、まずはプラットフォームのSTEP1~3の可視化、分析、最適化を自治体の業務ごとに適用したうえで、全庁で統一プラットフォームを利用し、その後は広域自治体においてSTEP4の標準化(共同化)して、豊かな生活・より良い社会の創出を図る考えだ。
最後に別府氏は「現状では来年度に200自治体ほどから見積もり依頼を受けており、確実に納めていく。今後、地方から全国に自治体DXを拡大し、地方発の唯一無二のプラットフォーマーを目指す」とコメントしていた。