米Oktaは1月26日、オンラインでグローバルにおけるOktaのユーザーが使用した業務アプリの利用動向に関する年次調査「Businesses at Work 2022」の結果を発表した。同調査は、Oktaの1万4000社以上のユーザーが利用している7000以上のアプリケーションと連携する「Okta Integration Network」(OIN)の匿名化されたデータにもとづいており、Okta経由でどのような業務アプリが使われているのかを分析することで、組織や人々の働き方の動向を把握。調査は、2020年11月1日から2021年10月31日までのデータを分析しており、今回が8回目となる。
最も人気のある業務アプリ - Google Workspaceが顕著な伸び
顧客数ベースで最も人気のある業務アプリの1位は、前回に引き続きMicrosoft 365となり、昨年Salesforceから2位の座を奪ったAmazon Web Services(AWS)は今回も2位をキープし、Google Workspaceが前年比38%増でSalesforceを抜き、初めて3位を獲得した。
米Okta データ分析担当ディレクターのローレン・アンダーソン(Lauren Anderson)氏は「Google Workspaceの成長はAPAC(アジア太平洋)、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)がけん引しており、飛躍的に成長した。前年比でAPACでは68%、EMEAは43%の成長率だった。一方、Zoomは北米における成長がグローバルの成長をけん引し、同地域で3位のAWSに迫りつつあり、APACでは37%、EMEAは45%の成長率を達成している。Slackに関しても北米以外の地域で成長し、APACで40%、EMEAでは49%の成長率だ」と説明した。
また、顧客数ベースで最も急成長した業務アプリのトップ10のうち、Notion、TripActions、Postman、Keeper、Airtable、Fivetran、Gongがランクインし、ランキングの7割が新しいアプリが占めた。昨年同様、今回もランクインした急成長アプリは、Miro、Figma、monday.comとなった。ユニークユーザー数ベースで最も急成長した業務アプリを見ると、Netskope、Calendly、Notion、TripActionsなどが急激な伸びを示している。
顧客数ベース、ユニークユーザーベースの業務アプリランキングをふまえ、アンダーソン氏は「コラボレーションツールは前年比20%の成長率となり、Notionなど新しいツールに勢いがある。また、クラウドセキュリティソリューションは同31%成長し、Netskopeは913%の成長率を誇っている」と述べた。
企業では従業員の用途に応じて最適なアプリケーションを提供し、従業員の生産性向上ニーズに対応するために、ベストオブブリード(各分野でそれぞれ最適な製品を選定して組み合わせること。例:OktaやSlack、Box、Zoomなど)によるアプリケーションを採用している。
生産性スイートの上にベストオブブリードのアプリケーションを追加することで、企業はコラボレーションとセキュリティのすべての要件を満たすプラットフォームを構築している。実際、同社のユーザー1社あたりの平均アプリ数は89個(昨年は88個)、大規模企業(従業員数2000人以上)では187個、小規模企業は72個となり、4年以上Oktaを利用しているユーザーは平均210個(昨年は207個)のアプリを導入している。
特に、Microsoft 365を導入しているOktaユーザーの33%は4個以上のベストオブブリードアプリを利用し、ベストオブブリードによるアプリケーションの採用が増加していることが判明。例えば、Microsoft 365を導入しているOktaユーザーうち、Google Workspaceを導入したユーザーが昨年の36%から38%に増加し、AWSも同じく昨年の41%から43%に増加した。Zoomは、昨年の42%から45%に増加しており、Slackも昨年の32%から33%に増加している。
マルチクラウドの台頭とダイナミックワークの支援
続いて、顧客数で最も人気のあるクラウドプラットフォームはAWSとなり、次いで前年比21%成長したMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)の順となるが、AWSを含めない場合でGCPは同40%の成長率となっている。
Oktaユーザーがアクセスしたクラウドプラットフォームの数は2017年は1つが92%、2つが8%だったが、2021年は1つが86%、2つが13%、3つが1%とマルチクラウドを活用するユーザーの割合が増加し、AWS+GCPの組み合わせによるOktaユーザーの割合はAWS+Azureの2.4%を抜き、2.6%となっている。
アンダーソン氏は「圧倒的な人気を誇るAWSだが、AWSと組み合わせるからといって他のプラットフォームが成功するというわけでない。AWS+Azureを組み合わせて使うユーザーは減少している」との認識を示している。
一方、コロナ禍において企業はリモートワークを支援するためのテクノロジーを追加することに注力していたが、オンライン化の進展に伴い現在ではシームレスでセキュアな顧客体験を提供すること注力している。組織は従業員の支援に焦点を当てたプラットフォームの整備に取り組むため、HRツールの導入を進めている。
そのような状況において、顧客数ベースで最も人気のあるHRツールはWorkday、BombooHR、Ultimate Software、Lattice、Culture Ampの順となっている。
また、Oktaが提唱するダイナミックワーク(フレキシブルな勤務スケジュールと適切なテクノロジーを提供する)は統合型職場管理システムを活用しており、ユニークユーザー数で最も人気のある同ツールの順位はOfficeSpace、Envoy、Robin、SpacelQとなる。
そして、Oktaユーザーが採用したリモートアクセスソリューションのランキングでは、パロアルトネットワークスのGlobalProtectが前年比42%成長し、前回に引き続き最も使われたソリューションとなった。2位のCisco AnyConnectも前年比38%成長した。
AWS Client VPNは、前年比190%という成長率で昨年から4つ順位を上げ、3位にランクアップし、Fortinet FortiGateは前年比66%の成長率で4位となり、ZscalerはNetskopeを抑えて5位にランクインしている。
セキュリティと開発者向けツール
多要素認証(MFA)の要素別ランキングでは、ユーザーによって採用するMFAの要素の強さに大きなばらつきがあるという。アンダーソン氏は「Oktaのユーザーはより安全なMFA要素の採用を望み、CIAM(Customer Identity and Access Management:顧客ID&アクセス管理)ではアクセシビリティを重視している」と話す。
ユーザーは、ID/パスワード入力のみの弱い知識ベースのMFA要素から、Okta Verifyのようなスマートフォンにワンタイムパスワードを送る強い所有ベースの要素や、WebAuthn(FIDO2)をサポートする生体認証要素へと移行している傾向があり、セキュリティキーとバイオメトリックは前年の17%から21%に伸びたほか、電子メールの利用も10%に伸びている。
また、CIAMは顧客体験と使いやすさ、セキュリティのバランスを取っていることが分かり、顧客向けアプリを展開する組織は従来からエンドユーザーが容易に利用できる要素をできるだけ幅広く組み合わせて提供しており、SMS/通話 、電子メール、Okta Verifyが主要な選択肢となっている。
CIAMの要素としての電子メールの利用は、前年の32%から今回46%に増加しており、セキュリティキーとバイオメトリクスのカテゴリは横ばいだが、CIAMのユーザーの3%がWebAuthnを導入している。
アンダーソン氏は「ゼロトラストのセキュリティモデルで必要なのは、アプリケーションやデータへのリクエストに対して、ダイナミックかつリアルタイムにユーザー、デバイス、ネットワークのコンテキストを解析・対応することだ。新規顧客の大半はユーザー登録を行う際に、より高い認証要素としてWebAuthnなどを利用している。そして、登録済みのデバイスにアクセスを付与することの限定や、異なるデバイスからのアクセスがあった際は、より強化された認証を適用することが増えており、リスクベースの認証を行う顧客は91%増加している」と述べていた。
一方、顧客数ベースで最も人気のある開発者向けツールを見ると、Atlassian Product SuiteとGitHubが引き続き伸びており、Atlassianは前年比36%成長し、GitHubは前年比41%成長した。PagerDutyは前年比38%増、Datadogは44%増でとなった。
トップ10のうち7つがアプリの監視とインシデント対応を扱っており、そのうち4つがログアグリゲータのSplunk、Datadog、New Relic、Sumo Logic、2つがモニタリングシステムのSentryとAtlassian Statuspage、1つがインシデント管理システムのPagerDutyとなった。
開発者は、アプリの長期的な安定性を促進するために、障害に関するプロセスの構築や、大きな問題になる前に問題を発見するためのアプリケーションの監視などに注目しているという。なお、なお、SDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)ツールを使うOktaユーザーの割合はJavaScriptが77%、Goが19%、C#が12%、Pythonが7%となっている。