新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、デジタル化の波が加速したと言われている。しかし、デジタル化は変革のための手段であって目的ではない。では、変革につなげるにはどうすればいいのか。2021年12月9、10日に開催された「TECH+EXPO 2021winter Forデータ活用~データが裏づける変革の礎」において、アビームコンサルティング 金融ビジネスユニット 執行役員 プリンシパルの佐藤哲士氏が三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役員CDO(チーフ・データ・オフィサー)兼 経営情報統括部長 櫻井貴之氏と対談し、デジタル化とDXについてのMUFGの考えを聞いた。
コロナが後押し、インターネットバンキング利用は5年で倍増
対談は、新型コロナウイルス感染症の流行がもたらした影響について、佐藤氏が櫻井氏に尋ねるところからスタートした。櫻井氏はコロナ禍を「テール・イベント」と位置付け、「非接触が強いられる中で、デジタル化が大きく進んだ。とは言え、非接触だけで全てのことを済ませるのは難しい。(アフターコロナは)元に戻る部分と戻らずにデジタル化した状態で根付く部分に分かれるのでは」と予測する。
コロナ禍は、MUFGのデジタル化を大きく推進させた。接客の非対面化に向けた取り組みの結果、店頭事務件数は5年でほぼ半減し、約1400万件になった。一方で、個人向けのインターネットバンキング利用者は5年で約2倍となり、700万人を越えた。中でも、インターネットバンキングを利用した振込率は63%となり、これも5年前の倍だという。行員の働き方にも変化があった。コロナ禍でもエッセンシャルワーカーであることから店舗は通常通り営業したものの、本部行員はピーク時には7~8割が在宅勤務にシフトしたという。
「人々の行動が情報として置き換えられ、蓄積されるようになりました。効率化や利便性を考えると変わらなければならなかったという変化の部分と、コロナという強制力により変わらざるを得なかった部分もあります。なかなか変化できなかった部分が変わったことは大切ですが、変わらなくていいところまで変わってしまっている部分がないわけではありません。そのバランスをとることが重要なのだと考えています」(櫻井氏)