「データ量が爆発的に増加し、デジタルエコノミーが本格化するなか、サイバーtoサイバーを中心としてきた従来の『DX1.0』から、物とデジタルがネットワーク化したサイバーフィジカルシステムを中心とする『DX2.0』の時代へ移り変わりつつある。そしてその先には、量子インターネットの世界が開けていく」と語る、東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者(CDO) 島田 太郎氏。

12月9~10日に開催された「TECH+ EXPO 2021 Winter for データ活用―データが裏づける変革の礎」では、これらの技術とコンセプトについて、同社が取り組む具体的な事例を挙げながら説明した。

いかにして「スケールフリーネットワーク」をつくるか

Webのリンクを可視化していくと、極度に集中した点(ノード)がある。Googleをイメージしてもらえばわかりやすいだろう。横軸にWebサイトが持つリンクの数、縦軸にリンクを持つWebサイトの数をプロットすると、正規分布ではなくべき乗の分布になる。言い換えると、大半のWebサイトは少数のリンクしか持たないが、少数のWebサイトが膨大なリンクを持っているということになる。

インターネットの世界は、こうした「スケールフリーネットワーク」に則っていると言える。これは、GAFAなど巨大プラットフォームが台頭した背景にもつながっている。スケールフリーネットワークでは、臨界点を超えると一気に変化するパーコレーション現象が起きやすい。つまり、イノベーション創出の土台になり得るということである。

島田氏によると、スケールフリーネットワークをつくる方法としては、最初に莫大な投資を行い無料で提供する米国方式と、デジュール標準を設ける欧州方式があるという。しかし、いずれにしても規模の大きな国家だからこそ成せる方法であり、日本において同様のアプローチを取ることは難しい。

そこで島田氏が提案するスケールフリーネットワークの実現方法が、アセットオープン化である。コモディティ化した技術をオープンにすることで、多くの人を巻き込んでいくという発想だ。