アルプスアルパインと宇都宮大学(宇大)は1月18日、再帰性反射技術による映像の空中表示と高感度静電容量検出技術による非接触式の空中入力操作を同時に実現しつつ、加飾印刷技術を応用したデザイン性に優れるステルスアイコン機能も搭載した、次世代ヒューマン・マシン・インタフェース(HMI)製品「ステルス空中インタフェース」を開発し、2022年より量産を開始し、2025年にエレベータや券売機のボタンなどへの採用を目指すことを発表した。

同成果は、アルプスアルパインのスタッフと、宇大 工学部基盤工学科情報電子オプティクスコースの山本裕紹教授(オプティクス教育研究センター(CORE) リアルワールド情報光学領域 領域長/ロボティクス・工農技術研究所(REAL)副所長兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、2021年12月1~3日に開催されたディスプレイ技術とその関連学術分野の国際会議「International Display Workshops(IDW '21 - 28th)」にて発表された。

また両者の役割は、アルプスアルパインが、空中インタフェースに最適なハードウェア設計・制御技術の開発、ユーザーや利用環境に応じた最適なUIおよびシステム制御技術の開発、商品化および販売など。宇大は、映像の空中表示の制御に関する理論の構築、学会発表などを通じた技術の信頼性獲得などとなっている。

エレベータのスイッチや鉄道の券売機、飲料の自動販売機、店舗のセルフレジなど、公共空間の入力デバイスは数多く存在するが、現在の新型コロナをはじめとする感染症に対する懸念など、直接触れて操作するといったリスクを避けることができる非接触インタフェースへのニーズが高まりを見せている。

しかし、既存の非接触操作デバイスの多くが、どの程度離れた距離から操作できるのかといった点が感覚的にわかりづらいという課題が存在しており、その解決が求められている。

アルプスアルパインでは、2008年から独自の高感度静電容量検出技術による空中入力デバイス「AirInput」の開発に取り組んできた。2022年の量産体制の構築を見据え、2021年5月からはエレベータや館内照明スイッチなどへの試験導入が実施されているほか、光通信レンズ開発などで培ってきたコア技術領域の1つである光学分野において、2019年より再帰性反射技術を用いた映像の空中表示に関する要素技術開発にも取り組んでいる。

一方、山本教授の研究室では、2014年より再帰性反射技術を応用した映像の空中表示をはじめとした、3Dディスプレイやマルチモーダル感性情報工学に関する研究に取り組んでいる。

今回、アルプスアルパインの高感度静電容量検出技術を用いた非接触操作デバイスと、山本教授らの映像を空中表示する理論をベースとした再帰性反射技術を融合させることで、より直感的で快適な非接触操作を実現し、非接触操作デバイスの社会普及を加速できると考え、共同での研究開発に着手することにしたという。

そして、高感度静電容量検出技術による空中入力デバイスに再帰性反射技術を応用した映像の空中表示機能を融合させることで開発された製品が「ステルス空中インタフェース」だという。同製品は、空中に浮かんだ映像に触れる要領で、スイッチやタッチパネルなどの既存の接触操作デバイスを操作するかのように、ユーザーにストレスを感じさせない直感的かつ快適な非接触操作を実現するとする。

また、同製品では加飾印刷技術の応用しており、木材や金属などを模した、一見ではディスプレイであると判別のつかない意匠性に優れたデザインの筐体上に、静電容量の変化に応じて手が近づいた時だけ映像を空中表示するステルスアイコン機能の付与を可能とし、セット製品のデザイン性を高めているという。

さらに、カメラや赤外線を利用した非接触技術と比較して、特に近距離操作時の入力精度の高さやデザイン性の高さに強みがあるともしているほか、筐体の外部にセンサやプロジェクタを設置する必要がないので、セットの設計自由度も高く、幅広い用途での利用が期待できるとする。

なお今後は、市場調査を実施してニーズや課題の深堀りを進めるとともに製品の完成度を高め、2025年をめどにエレベータや券売機など公共空間における表示/操作部への採用を目指すとしているほか、将来的には、XR(Extended Reality)を活用したサービスが一般的となる時代を見据えて、ゴーグルなどのウェアラブルデバイスを不要とする人体への負荷が少ない視覚情報提示デバイスとしての事業展開も視野に開発を進める予定としている。

  • ステルス空中インタフェース

    今回開発されたステルス空中インタフェースのイメージ (出所:プレスリリースPDF)