村田製作所の子会社である福井村田製作所で複数の従業員が新型コロナウイルスに感染し、操業を一部エリアで停止している問題を受けTrendForceは1月18日、その影響についての調査結果を発表した。
クラスターが発生した福井村田製作所の武生事業所は、スマートフォン(スマホ)やノートパソコンに使われる積層セラミックコンデンサ(MCLL)などの生産を担当。TrendForceの調査によると、村田製作所の主要生産拠点と生産能力の配分は、日本が56%、中国が36%、フィリピンが5%、シンガポールが3%となっており、村田製作所では、事前に工場でのクラスターが発生するような事態を予測して生産管理を強化し、対策を実施していたため、一部の生産能力の削減・停止のみとなり、工場全体の生産を停止するには至らずに済んでいるという。現に福井村田製作所は1月18日付で「集団感染が発生し稼働を停止していた対象エリアにつきましては、PCR検査の結果で陰性が確認された従業員のみが順次出社する体制が整ったため1月18日より操業を再開しています」とアナウンスを出しており、村田製作所としても、今のところ、生産や供給への影響はないとの見方を示しているという。
TrendForceによると、福井村田製作所は同社の生産能力の20.7%を占めており、主にハイエンドの民生用MLCCの生産を担当。一部操業停止による生産量の減少によって、サーバやハイエンドスマホなどの供給に影響を及ぼす可能性が懸念されるが、同工場では4〜6週間ほどの在庫を有しており、今回の件は市場に向けたMLCC供給に大きな影響を与えないと見られるとしている。
中国での新型コロナ感染拡大がMLCCメーカーに影響を及ぼす可能性
また、1月17日に中華人民共和国 国民健康委員会が発表したデータによると、1月に入って以降、1日あたり100人を超す規模で新型コロナの感染者が報告されており、その中には太陽誘電、SEMCO、WALSIN、FENGHUA、VIIYONGなどといったMLCCサプライヤの従業員が含まれているという。MLCCサプライヤ各社は生産場所を分散させ、生産能力の面で相互支援を行うこととしているようだが、感染者の増加傾向を受けて各社ともに生産ラインの運用とリスク管理の再度の見直しが求められるようになっているという。
なお、中国の天津での感染者数の最近の増加についてTrendForceでは注視するべきものとしている。天津経済技術開発区にあるSamsung Electronicsの工場は1月18日時点では正常に稼働しているようだが、冬季五輪の開会が近づくにつれ、中国政府はゼロコロナ政策の強化を図っており、居住地域での検査で陽性となってしまい、工場に出勤できなくなる事態を回避することを目的に、一部の生産ラインの従業員は一時的に工場内の社員寮に住みこむ体制としているほか、急激な感染拡大に伴う状況変化に対応することを目的に幹部自身も工場内で暮らしているという。
また、東南アジアにおけるMLCCの主要な生産拠点の1つに位置づけられ、村田製作所やSamsungの工場があるフィリピンでも、2022年1月以降、新型コロナ患者の数が急増していることからTrendForceでは、感染拡大の状況を注意深く観察していく必要があるとしている。