Skyは昨年の11月、名刺管理サービス「SKYPCE」(スカイピース)を1月26日から販売すると発表した

Skyといえば、クライアント運用管理ソフトウェア「SKYSEA Client View」が有名で、医療機関向けIT機器管理システム「SKYMEC IT Manager」など、運用管理のイメージが強い。そんなSkyが、なぜ名刺管理というビジネスアプリを提供することになったのか。商品企画を担当するSky ICTソリューション事業部 副本部長 金井孝三氏に、開発の狙いと製品の特徴を聞いた。

  • Sky ICTソリューション事業部 副本部長 金井孝三氏

SKYPCEの開発が始まったのは約2年前からで、登録した名刺データが自由に利用できないという不便さを感じたことがきっかけだったという。

「これまで他社の名刺管理製品も使ってきましたが、最先端の製品はクラウド提供の場合が多く、クラウドの場合、サービス事業者の中にデータがあるので、自分たちがデータを活用しようとすると、自由にハンドリングできないという問題に直面しました。お客様も同じことで困っており、非常に不満をもたれていました。自分たちでソフトを開発し、この問題を解決することもできますが、弊社代表の『お客様が困っていることを解決する製品を出していこう』という方針のもと、製品化することになりました」(金井氏)

SKYPCEは、同社にとって新たな領域の製品となるが、技術面でのハードルはなかったという。

「私どもはUIについてはいろいろな製品で評価をいただいており、AIや機械学習、名刺認識の部分は受託でデジタル複合機やデジタルカメラでの開発を行っていますので、開発に必要な要素技術はもっていました。ただ、お客様の要望や使い勝手に関するに部分は、お客様にヒアリングをしながら、他社の製品でよく使われる機能についても分析して、搭載する機能を決めていきました」(金井氏)

OCRエンジンについても、外部モジュールを使いながら、同社自身で手を加えて利用しているという。

名刺管理製品には、OCRだけを使ってテキスト変換を行うタイプと、最終的に人が介在してチェックするタイプの2つがあるが、同社は後者を選択した。コストや手間も余計にかかるが、人の手で最終チェックする理由を金井氏は次のように説明した。

「OCRのみの製品(利用者がOCR化した文字間違いを修正していく)タイプの製品をお使いお客様にヒアリングすると、デジタルデータ化した情報はほとんど使えてないという回答を得ました。OCRの場合、大文字の『I』、小文字の『l』と』i』、数字の『1』を間違えてしまう場合があります。メールアドレスで一文字でも間違いがあると、そのデータは使えないことになります。そのため、OCRのみの製品をお使いのお客様は、その都度、スキャン画像を呼び出して、名刺画像を確認して使われています。そのため、人間の目を使って確認して、正確なデータとしてお客様にお返ししないと、今後のDXで他システムとの連携を考えた場合、そのデータは使えないことになります」(金井氏)

SKYPCEの月額料金には毎月1人20名分の名刺データをデジタルデータに変換する料金や電話サポート、サーバ、スキャン用ソフトウェア利用料、保守費、バージョンアップ費用も含まれるという。

なお、SKYPCEのPはProxy(代理)という意味で、Skyのオペレータが代理で名刺をデジタルデータ化するという意味があるという。

また、SKYPCEはオンプレミス型で提供する点も特徴だ。

「最新の企業向け名刺管理製品はクラウド提供が殆どで、自社の個人情報の取り扱いルールでは対応できないので採用できないというお客様が数多くいらっしゃいます。そういうお客様は、第三者に企業にとって重要な名刺データを管理されることに、大きな抵抗感をもっています。こういったお客様にわれわれがオンプレミスで提供することで、その課題を解決できると思いました。ただ、サーバを設置することになると、利用人数が少ないと、費用対効果の面で採用が難しいお客様もいらっしゃると思いますので、将来的にはクラウドを利用したSaaSでの提供も考えていきたいと思います」(金井氏)

そのほか、UIにもこだわり、標準の表示形式として名刺イメージを採用した。

「各名刺をテキスト文字でリスト型で管理している製品が多いのですが、名刺のイメージで表示したほうが、名刺交換したときの状況を思い出せることもあり、名刺のイメージをそのまま表示するモードを標準にしています。また、どの地域かを表示する機能もあり、全国規模で事業を展開するお客様においては、名刺交換した方が、どの地域のお客様のご担当者かということがわかると思います。このあたりは、社内で使って要望としてあがってきた機能を組み込んでいます」(金井氏)

  • 名刺のイメージの表示。日本地図で住所からエリアを表示すると共に、別途顔写真の登録も可能となっている。

そして、SKYPCEの一番の特徴といえば、個人情報保護を意識したセキュリティだろう。 同社製品である「SKYSEA Client View」や「SKYDIV Desktop Client」と連携することで、各PCでの名刺情報の閲覧・編集・削除やデータのダウンロードを操作ログとして記録し、画面キャプチャーを禁止するように設定できる。また、データのダウンロードが行われた場合にアラートとして検知し、管理者に通知する機能もある。

「表示されている画面をハードコピーされたり、ダウンロードされたりすると、会社の管理外のデータとなってしまいます。弊社の製品であるSKYSEA Client Viewを組み合わせるとダウンロードされたデータも管理できます。名刺は全社で管理できますが、他の部署から見えないようにするように制限を掛けることもできます」(金井氏)

また、名刺データは、退職者がそのまま転職先にもっていってしまうというリスクもあると、金井氏は指摘する。

「個人で名刺管理サービスを使われている人もおり、社員が退職する際に、そのまま名刺データを転職先にもっていくということが可能です。ですから、企業で導入する名刺管理サービスは非常に重要な意味を持ちます。そのリスクに気づかれていないお客様も多いので、会社で名刺管理のシステムを導入して、それを社員に利用させることで、名刺データの持ち出しを防ぐことができます。また、個人で名刺管理アプリを導入して会社業務の名刺管理するのは、個人情報保護法の観点でもよくないので、会社で一括して管理していくことが必要だと思います」(金井氏)

SKYPCEは1月26日に発売されるが、今後はさらなる機能強化も計画されているという。

「MA(マーケティング・オートメーション)であればマルケト、SFA(営業支援システム)であればDynamics、Salesforceにデータを送る機能などの連携機能を現在開発中です。また、コロナ禍でオンライン会議が増えていますが、その場合問題になるのが名刺交換できないという点です。そのため、メインで話された方はわかるが、それ以外の方は誰なのかわからないという問題が出てきます。それを解決するために、現時点でもオンラインで名刺を送る機能は有していますが、それを大きく拡張して、オンラインでのWeb会議においても名刺交換ができる機能もできるだけ早く提供していきたいと思います」(金井氏)