西日本電信電話(NTT西日本)、夢洲コンテナターミナル、三菱ロジスネクスト、大阪市の4者によるコンソーシアムは1月17日、実証提案「港湾・コンテナターミナル業務の遠隔操作等による業務効率化・生産性向上の実現」が総務省の「令和3年度課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に採択されたことを発表した。

これにより、ローカル5GのSub6帯(4.8GHz帯から4.9GHz帯)を活用して、港湾業務の効率化や生産性向上に向けた実証実験を大阪・関西万博予定地の夢洲で開始するという。

  • 夢洲コンテナターミナルと周辺道路

夢洲コンテナターミナルは取扱貨物量の増加などに伴い、ゲート前での渋滞問題が顕在化している。そうした中、港湾業務のデジタル化による業務効率化や生産性向上と、2025年の大阪・関西万博の開催に向けた工事車両や万博来場車両、物流車両などの円滑な交通確保のための対応が急務となっている。

また、港湾エリアは広大な敷地であるため有線でのネットワーク整備が費用面で困難である上、多くの車や人などが出入りするためWi-Fiの電波干渉が頻繁に発生する。さらに屋外なので電波反射が期待できず、積み上げられたコンテナが遮蔽物となるなど通信環境整備の課題があるという。そこで4者コンソーシアムは、港湾事業の持続的発展と、万博開催に向けて抱えている課題、および通信環境整備に関する課題を解決するため、実証実験を開始するとのことだ。

実証実験では、空気中の伝搬による減衰が少なく、障害物があっても回り込んで届きやすい帯域であるといった理由からSub6帯を利用する。コンテナのダメージチェックにおいては、ゲート作業を効率化するためにゲート作業員がスマートグラスを装着し、有スキル者によるダメージチェックを遠隔化できるかを確認する。同時に、将来のダメージチェックのAI判定に向けてダメージ画像のデータを蓄積する。

  • コンテナの遠隔ダメージチェック実証のイメージ

RTG(Rubber Tired Gantry cran:タイヤ式門型クレーン)に伴う危険作業の遠隔化を目的として、ローカル5Gを用いて低遅延かつ高精細な映像伝送を行うことにより、安定したRTGの遠隔操作か可能かを実証する。

  • RTGの遠隔操作の有用性確認実証のイメージ

また、周辺道路の渋滞解消に向けて、コンテナターミナルに来場する外来トレーラーを周辺道路とコンテナターミナルゲート前に設置した2台の4Kカメラで常時撮影し、車両ナンバーを自動取得することで、待機時間の可視化や渋滞予測が将来的に実現できるかも確認するという。さらに、コンテナターミナル内での積荷時間の削減に向けて、事前荷繰りに必要な車両情報を「CONPAS(Container Fast Pass:)」へ円滑に伝送できるかも検討する予定だ。なお「CONPAS」とは、コンテナ物流の効率化や生産性の向上を目的に国土交通省が開発した新・港湾情報システムである。

  • 車両情報を活用した渋滞状況改善実証のイメージ

周辺に開放地や郊外地が存在する港湾エリアにおいては、水面やコンテナなどを考慮した電波伝搬特性の調査や、電波反射板によるコンテナ裏などの電波の死角に対する通信エリア化が可能かも検証する。