2021年、デジタルアート作家「Beeple」のNFT作品が6900万ドルで落札されたニュースが話題となった。国内でも楽天が参入を表明したが、2022年に入っても、NFTに関する話題は尽きない。

今後もさらなる発展が予想されるNFTについて、NFTコンテンツ事業を展開するMintoの代表取締役社長である水野和寛氏に、「そもそもNFTとは?」「NFTはなぜ価値があるのか?」といった基本的な内容など、さまざまな質問をぶつけてみた。

  • Minto 代表取締役社長 水野和寛氏

--そもそもNFTとはどのようなものですか

水野氏:NFTとはNon-Fungible Tokenの略であり、日本語では「非代替性トークン」とも呼ばれます。代替できないということは、そのデータが唯一無二であることを示しています。

現実世界を例にすると、Aさんが持っている1万円札とBさんが持っている1万円札は交換(代替)しても価値は変わりませんよね。反対に、同じものでも価値が変わる例があります。例えば洋服や靴は、未使用かどうかや、誰が使ったものかといった要素によって価値が変わってしまいます。これが「非代替」のイメージに近いです。

注意していただきたいのですが、NFTはブロックチェーン上に記録されたデータそのものが唯一無二なのであって、ブロックチェーンからリンクしている画像や動画はその付帯物という扱いです。絵と鑑定書の関係性に例えるとわかりやすいですね。画像はコピーできてしまいますが、画像と一緒にブロックチェーン上に刻まれたデータがセットであることで価値が担保されます。現実世界でも絵と鑑定書をセットで販売しますが、NFTの場合はむしろ刻まれたデータ(鑑定書)の方により価値があるというイメージです。

--NFTとブロックチェーンの関係について教えてください

水野氏:ブロックチェーンとは分散型台帳とも呼ばれる技術であり、どこか1カ所のサーバにデータを集めるのではなく、データを分散して世界中のみんなで管理する仕組みです。特定の誰かがデータを一元管理しているのではなく世界中の人が分散してデータを検証していて、今までにない形で正当性を担保しています。どこか1箇所に依存しないことで結果的にデータの信頼性が高くなっている点が特徴です。

分散処理とその信頼性の高さに着目して作られた最初の例が、代替可能なトークン(FT:Fungible Token)である暗号資産(仮想通貨)です。そしてその次がNFTですね。FTと比較して概念としてのNFTはあり規格もあったものの、どのようなサービスに活用すべきか、なかなか初期はアイデアがなかったと思います。

2017年ころにNFTの規格を活用したサービスが試験的にいくつか出始めたのですが、その中で大きな話題となったのが「CryptoKitties」です。NFTをネコの遺伝子に見立てて、ネコのキャラクター同士を交配して新しいデザインの個体を生み出すゲームです。「CryptoKitties」の流行によって、NFTとコレクション性が高いゲームとの親和性が確認できました。ブロックチェーン上に、一生変更することができない唯一無二のデータが記録されるというポイントが生かされています。

--NFTが高値で取引される場面がありますが、NFTの何に価値があるのでしょうか

水野氏:NFTの価値は2種類あると思います。1つ目はNFTコンテンツの希少性が価値となる例です。有名な人がNFTアートを描いた際に高い価値が付くことは想像できるでしょう。ほかにも、世界初となる取り組みが価値を持つ場面もあります。

2つ目はデータの古さが価値となる例です。「CryptoKitties」の流行によって盛り上がったNFTブームは2019年から2020年にかけて下火になりました。2021年にもう一度NFTが注目され始めると「NFTって何に価値があるんだろう?」という議論が世界で巻き起こったのです。この議論によって「古いデータにこそ価値がある」とする意見が主流となりました。

ヴィンテージワインやヴィンテージカーのように、古いものほど価値があると見なされたわけですね。2018年に登録されたNFTは、データを書き換えて2017年に登録されたことにはできません。ブロックチェーンだからこそ2018年当時に記録されたデータであると担保でき、デジタルデータに価値が生まれます。

--NFTと相性が良いビジネスはありますか

水野氏:キャラクタービジネスと相性が良いと感じています。キャラクターを用いたビジネスは基本的にライセンス(版権)によるビジネスなのですが、ライセンスとブロックチェーン技術は非常に親和性が高いです。

キャラクターを使用したコラボレーショングッズを販売する場面を想像してください。通常はグッズ販売社が毎月の販売個数に応じて版権元にライセンス使用料を支払います。NFTであればお金とデータの流れを追跡できますので、販売個数の報告が不要になり、販売個数をごまかすようなことができなくなります。将来的にはグッズが売れた瞬間に送金されるまで自動化が進むと思います。お互いに信用がなくてもビジネスが成立するようになるのではないでしょうか。

ライセンスによるキャラクタービジネスに近いのですが、ゲームやアニメなど二次流通以降の流通が盛んな業界とも相性が良いですね。中古市場でのグッズ売買が盛んな業界において、二次流通がどれだけ盛り上がっても販売元の企業にはお金が入ってこない点が課題でした。しかし、NFTであれば二次流通以降の売買もトラッキングできるようになりますので、販売元にもロイヤリティが還元される仕組みを作ることができます。

最後に、もっと相性が良いと感じるのはゲームです。これまではゲーム内で入手できるアイテムはそのゲーム内でしか価値を持ちませんでした、ゲームの運営会社がサービスを終了してしまったら価値を失います。しかし、ゲーム内のアイテムをNFT化すればゲーム外の市場でも価値を持つようになります。ゲーム自体が終了してもアイテムのデータは残り続けるので、価値が失われることがありません。

そうすると、単純にゲームを楽しむ以外にも、アイテムをゲーム外の市場で売りたいがためにゲームをプレイするような人が出てきました。例えば「伝説の剣」のようなアイテムが欲しい人のために頑張ってゲームを攻略して、ゲーム外で「伝説の剣」を欲しい人がお金で買い取る経済が生まれたのです。

「Play-to-Earn」という言い方をしますが、ブロックチェーンという技術によってリアルな世界と変わらないような経済圏が国境を越えてバーチャルな世界でも形成されています。お金を稼ぐために遊ぶ人が世界中で誕生しているのはNFTならではの面白い動きです。