米国立電波天文台(NRAO)は現地時間1月11日、すばる望遠鏡、カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡(VLA)、アルマ望遠鏡などを用いた多波長観測により、地球から約3700光年先にある若い連星系「おおいぬ座Z星」(Z CMa)に“侵入した”天体が、原始惑星系円盤を乱す様子を観測したことを発表した。
同成果は、加・ビクトリア大学のRuobing Dong博士、東京大学/ABCの田村元秀教授らが参加する国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の天文学術誌「Nature Astronomy」に掲載された。
今回発見された連星系は、すばる望遠鏡などによる赤外線による観測では、連星系を取り囲む原始惑星系円盤と、その中で細長く伸びた尾のような構造が観測されている。そしてアルマ望遠鏡による観測により、この尾の先端にある連星から約5000天文単位の位置に、新たな天体が発見された。
原始惑星系円盤の近くを別の天体がフライバイすると、円盤の形態に渦や歪み、隙間など、その痕跡といえるような変化が起こるという。今回、Z CMaの円盤の観測が注意深く実施され、フライバイによる複数の痕跡が特定されたとした。
これらの痕跡は、天体飛来を検証するのに役立っただけでなく、その“訪問”がZ CMaと、その星系で生まれる惑星の未来に何を意味するのかを考えるきっかけにもなったとする。フライバイ現象は、Z CMaの周りに長い「尾」が作られたように、惑星誕生のゆりかごである原始惑星系円盤を劇的に変化させることができるとする。
さらに、中心星への影響も考えられるという。Z CMaでは、円盤から突発的にガスが降り積もることによる中心星の爆発的な増光現象が知られているが、これは飛来天体が円盤を乱したことにより促進されている可能性があるという。結果として、星系全体の発達に対しても、まだ観測はされていないが、何らかの影響を与えている可能性があるとした。
今回の研究を率いたDong博士は、銀河系全体の若い星系の進化と成長を研究することは、我々の太陽系の起源をより理解するためにも役立つと指摘する。「このような事象を研究することで、私たちの太陽系がどのように発展してきたのか、過去の歴史を知ることができます。新しく形成された星系でこのような現象が起こるのを見ることで、『ああ、これは私たちの太陽系でずっと昔に起こったことかもしれない』とうのに必要な情報を得ることができるのです」とコメントしている。
また田村教授は、「Z CMaは不思議な変光を示す天体として昔から注目されていましたが、このような姿をしているとは驚きでした。すばる、ALMA、VLAという多波長でのシャープな観測と最新の理論研究が連携することで、生まれたばかりの星で起こった珍しい飛来現象を見事に捉えることができました」と述べている。