中国の通信機器大手の華為技術(Huawei)は、中国内における自給自足に向けた半導体サプライチェーン構築に関わる企業に対する投資を活発化させているとWall Street Journalが香港発の情報として1月11日付け(米国時間)で報じている。
それによると、同社は2019年に立ち上げたファンド「哈勃科技投資(ハッブル・テクノロジー・インベストメント)」を通じてこれまでに中国内企業56社に対して投資を行っているというが、ファンドの規模や個々の投資額は明らかにしていない。投資先には、半導体設計・製造企業や半導体製造装置・材料メーカーなどが含まれている、国内企業の育成を進めることで、将来的には自社の半導体製造に活用するだけはなく、中国の半導体産業そのものが成長することによる財務的なリターンも期待しているという。
米国技術に頼らない半導体工場建設を目指すHuawei
Huaweiが2021年末に示した2021年の売上高見通しによると、前年比で約3割ほど減少するという。米国による半導体関連の規制が影響したものだが、このまま制裁が長引けば、会社の存続そのもののに影響が出ることから、米国の技術に頼らない半導体工場の建設を目指している模様で、ゆくゆくは子会社であるHiSiliconで設計した半導体の自社での製造を行うIDMとなることを目指しているようである。
2020年段階の欧米メディアの報道によると、同社はまず、上海に研究開発用の小規模な半導体工場を建設し、45nmプロセスを用いた半導体の試作から半導体製造を開始。その後、2021年にIoT端末向け28nmプロセスチップ、2022年末までに20nmプロセスによる通信機器用チップの製造を目指すとしていたが、同報道の後、情報が漏れ伝わってこないため進捗は不明ながら、米国政府の逆鱗にふれぬように忖度する中国外の半導体関連メーカーから協力を得るのは難しく、計画そのものが遅れている可能性が高いと見られる。最近、中国における複数の先進半導体製造立ち上げプロジェクトが失敗に終わったことをWall Street Journalが伝えており、海外からの先進技術導入の難しさを浮き彫りにしている。
Huaweiは半導体製造の経験がないため、試作工場は上海市政府が支援する半導体研究開発企業である上海集成電路研究中心(Shanghai IC R&D Center)が運営することになっているという。つまり、Huaweiは表には出ずにこの工場に資金の提供と装置購入の手助けをしている形をとることで米国政府を刺激しないようにしていると装置業界関係者は見ている。この試作工場はいわば練習で、いずれ高性能な米国以外の製造装置がそろえば、深圳市に米国技術に依存しない半導体量産工場を建設する計画であると見られており、その実現に向け、国内装置メーカーに対する支援を行っているようである。
なお、半導体装置業界関係者の話によると、同社は日本の製造装置メーカーにもさまざまな形での協力を要請している模様だという。