Sitecore(サイトコア)は1月12日、「2022年のマーケティングトレンド予測」を発表した。これは、サードパーティーデータからの脱却によって訪れる、ポストクッキーの世界でマーケターが注視すべき点を提言するものだという。主な予測は以下の4点。

1点目は、マーケターの最重要課題は「サードパーティデータからの脱却」となる点だ。2022年4月に改正個人情報保護法の施行を控えており、サードパーティデータと自社データを統合して本人を識別できる状態で利用するためには同意を得る必要が生じる。生活者のプライバシー保護に対する関心は今後も高まると予想されることから、「サードパーティデータからの脱却」は2022年にマーケターが取り組むべき最重要課題なのだという。

生活者が自身の情報について共有範囲や使用方法を選択できるようにすることで、プライバシー侵害の懸念を払しょくできれば、生活者との関係をより強固な信頼関係へと昇華できるかもしれない。

2点目は「パーソナライゼーション」から「トータル・エクスペリエンス」への変化が不可欠になる点だ。新型コロナウイルス感染症の流行を受けて生活者の購買行動はオンライン上で完結するようになる中で、特に小売り企業は閲覧履歴やAI(artificial intelligence:人工知能)を活用して、個々人に適切な商品を案内する「パーソナライゼーション」が必要だ。

一方で、現代の生活者の周りにはさまざまなコンテンツの選択肢があふれている。そこで同社では、マーケターはこれまでのパーソナライズ戦略をアップデートしてビデオやポッドキャストといったよりクリエイティブなフォーマットのコンテンツを利用すべきとしている。新型コロナウイルスの感染が落ち着いて外出が増える場合を想定すると、デジタル体験と実体験がどのように影響し合うかを考える必要がある。そのため、顧客の日頃のタッチポイントやカスタマージャーニーを考えた「トータル・エクスペリエンス」が重要になるとのことだ。

3点目として、企業は「ストーリーテリング」を取り込んだコンテンツで消費者との本物のエンゲージメントを築く必要がある点を挙げている。 PwCの調査によると、生活者の半数以上が企業が顧客満足度を高める際に「人間的要素」を失ったと感じていることが明らかになった。また同調査より、半数近くの生活者がデジタルとの接点に疲労を感じ、インターネット接続可能なデバイスから離れる時間を求めているのだという。

こうした背景を受けて同社は、「オーディエンス一人一人が自分事と考えられるようにエンゲージメント施策を通じて顧客を引き付ける必要がある」として、ストーリーテリングがこれまで以上に重要になると予想している。現代の生活者は自身の信念や価値観に沿う企業を好む傾向にあり、企業は顧客の信念や価値観に適合するストーリーテリングを取り入れる必要があるのだという。

「トータル・エクスペリエンス」の観点によるカスタマージャーニーの設計と「ストーリーテリング」を取り込んだコンテンツによって、生活者へのこれまでにないアプローチが可能になるという。企業にとってデジタル上での存在感である「デジタルプレゼンス」を高めることにつながるとのことだ。

4点目は拡張現実は次のマーケティングのフロンティアになり得る点だ。近年は小売企業が顧客体験を向上させるために常に新しいテクノロジーを導入する例が増えている。

資生堂は素顔でもメイクをしているように見えるAR(augmented reality:拡張現実)フィルター「TeleBeauty」の開発を進めており、PC用オンライン会議ツールで最新のメイクを体験できるARフィルターを提供する。ニトリはインテリア試着ARアプリを通じて自宅に家具を置いた際のシミュレーションを可能にした。この2社ではARで試して気に入った商品やアイテムをオンラインショップで購入可能だ。

また、実店舗を訪れた買い物客がスマートフォンでQRコードを読み取ることで、商品の詳細や店舗内在庫と正確な位置を確認可能なソリューションも存在する。このように、ARなどをはじめとするテクノロジーはユニークな顧客体験を生み出しており、今後もその方向性は強化されていくと同社は見ている。