日立製作所(日立)と西日本鉄道(西鉄)は1月11日、移動と経済の活性化の両立を目指した公共交通機関利用者の行動変容を促す実証実験を、2月1日から3月7日まで福岡県で実施すると発表した。日立独自のナッジ応用技術によって人々の行動変容を促す情報を生成するプラットフォームを活用する。西鉄電車・バスの利用者から参加者を募集し、Webアプリを用いて、ピークシフト、移動総量の増加、商業施設への誘客に対する効果と実用性を検証する。
ナッジとは、「ひじで軽く突く」という意味で、人々が強制によってではなく自発的に望ましい行動を選択するよう促す仕掛けや手法のことを指す。日立が開発したプラットフォームは、Webアプリの利用者に対して、天気を考慮した経路の混雑予測や遅延情報、利用者の特性に応じた経路付近の店舗情報を提供する。寄り道に適した店舗や、混雑を避けられる迂回経路・出発時間も表示し人々の行動変容を促す。
具体的には、参加者がスマートフォンからWebアプリで移動経路を検索すると、混雑を回避するルートや寄り道先などの移動パターンが、初回ログイン時に登録する個人の特性に応じて表示される。移動パターンは、西鉄電車とバス路線の各区間における天候を加味した統計的な混雑推定、商業施設の混雑情報、目的地への経路、個人の嗜好や特性などに基づいて提案される。
例えば、検索したルートの一部区間が混雑していた場合、混雑を回避できる代替経路や代替出発時刻に加え、寄り道先が提案される。健康志向の高い人や地元への貢献意識が高い人など、利用者の特性に合わせて提案方法が変更される仕組みになっている。
両社は2021年3月にもナッジ技術を活用した同様の実証実験を福岡県で実施している。1回目の実証実験では、Webアプリの情報に応じて行動を変容していたこと、そのことが交通機関のピークシフトや街の活性化に影響を与えていたことを確認できたという。2回目となる今回は、Webアプリの機能を強化して、対象店舗数を49店舗から3000店舗以上に拡大する。
両社は今後、同実証実験の結果をもとにナッジ応用技術を強化し、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)アプリとしてのリリースを目指す。日立は将来的にはプラットフォームのAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)提供として、西鉄に限らず他の交通事業者、一般的な企業にも同技術をビジネスとして展開していく方針だ。