新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界を大混乱に陥れた。未だ収束のめどは立っていないが、混乱が続く中でさまざまなことが一気に進展した感もある。その最たるものがデジタル化だと言えよう。
「コロナの霧が晴れた後、世界はデジタル資本主義になっている」――そう見通しを語るのは、元国務大臣であり、慶應義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏だ。12月9、10日に開催された「TECH+EXPO 2021Winter forデータ活用~データが裏づける変革の礎」では、この竹中氏が基調講演「デジタル資本主義で勝ち残る未来をつくる」に登壇した。
第4次産業革命が加速、デジタル資本主義の時代へ
新型コロナウイルス感染症が世界的流行を始めて間もなく2年になる。しかし、人類がパンデミックを経験するのはこれが初めてではない。これまでにも人類はさまざまな感染症に襲われ、戦い、その度に教訓を得てきた。「最大の教訓は、パンデミック後は大きく違う世界になっているということだ」と竹中氏。だからこそ「新しい時代に備えなければならない」と続ける。
では、コロナ後に到来する新しい時代とはどのような時代なのか? コロナ禍以前から起こり始めていた第4次産業革命が一気に加速し、デジタル資本主義の時代になると竹中氏は予測する。
第4次産業革命の大きな特徴は、ビックデータとデータの活用にある。データをいかにうまく使うかという命題に対し、竹中氏は「スマート」「サステナブル」「インクルーシブ」という3つのキーワードを挙げた。
スマートテクノロジーを使いこなす
1つ目のスマートとは、「スマートテクノロジー」、つまりデジタルテクノロジーを指す。デジタルを活用することで生産性を改善し、行政は速やかな分配政策を取ることが可能だ。「第4次産業革命で出てきた新しいテクノロジーを存分に使い、経済を発展させることが重要」だと竹中氏は語る。
だが、時として制度や規制がスマートテクノロジーの活用の妨げになる場合があるという。竹中氏は例として、2020年春の小中学校の一斉休校を取り上げ、「欧州の一部の国で遠隔教育ができたのは、全児童がタブレットを持っていたからではないく、日本では遠隔授業が正式に文部科学省に認められていないため、休校措置になったのだ」と説く。リモートワークについても、多くの賃金が労働時間に対して支払われる形式であるため、定着は難しいと見ているという。その一方で、2021年9月に発足したデジタル庁については、トップが内閣総理大臣であることを挙げ、「強い権限が発揮できる形になっている」と期待を寄せた。