サーバ、ストレージ、ネットワーク機器と一通りのハードウェアを取りそろえているヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)だが、ここ数年は、クラウドへのシフトを加速している。その道筋の最中である2020年9月に現代表執行役員社長に就任した望月弘一氏に、2021年の総括と2022年の抱負について聞いた。

  • ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE) 代表執行役員社長 望月弘一氏

社長就任の理由はソリューションの可能性とカルチャーに惹かれたから

ご存じの方も多いと思うが、望月氏は現職に就く前、レッドハットの代表取締役社長を務めていた。そこで、望月氏にHPEの社長に就任することを決めた理由を聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

「レッドハット時代、HPEは大きなパートナーの一社でした。協業の中で、HPEのソリューションが進んでいて可能性があることを感じていました。また、HPEが自社の製品にこだわらずに、ベスト・オブ・ブリードの製品を提供している企業と協業を行い、最終的に、お客さまにどういう価値を提供できるかを判断ポイントにしている点も魅力的でした。加えて、HPEの社員はオープンで、コラボラティブな人が多かったのも印象的でした」

こうした複数の魅力をつないでいくことで、HPEはIT業界でこれまで以上に貢献できる可能性が高まると感じ、また、そうあるべきと望月氏は思ったそうだ。

社長というポジションに就いた今、望月氏は人、テクノロジー、カルチャーを最大限に駆使して、HPEがDX(デジタルトランスフォーメーション)カンパニーとして正しく認知されるような環境を作っていくことを目標にしている。

「HPEはハードウェアの会社としてのイメージが強いですが、もっといろいろなものを持っています。顧客のDXを支援できるポテンシャルを持っていますが、それを十分に伝えきれているとは言い切れません。われわれのポテンシャルを改めて業界、お客さまに伝えることで、HPEはDXカンパニーであることを明確に認識してもらうことを目標としています」

Edge-to-Cloud戦略が功を奏し、2021年の業績は好調

2021年のグローバルの業績は前年比で、受注が16%増、売上が3%増、営業利益が25%増、フリーキャッシュフローが2.8倍と好調であり、日本もグローバルに準じた業績とのことだ。望月氏は、「半導体の影響を受けながらの売上3%増は誇れる数字であり、受注は当社に対する市場の期待の現れと言えます」と話す。

この好調さは、昨年から標榜している「Edge-to-Cloud戦略」が功を奏した結果だという。「Edge-to-Cloud戦略」は「コア事業」「成長事業」「As-a-Serviceへの転換」の3つの柱から成る。

「コア事業」においては、コンピュートの受注が前年比で受注10%以上、ストレージの受注が前年比1桁台後半の成長を遂げている。「成長事業」においては、堅牢なコネクティビティを求める顧客が多いという背景の下、2018年に4年間で4000億円投資することを表明したエッジの受注が前年比2ケタ成長を達成した。

「As-a-Serviceへの転換」は、クラウドサービスの販売ということになるが、2021年度は受注が前年比61%成長を果たしており、過去1年間の新規契約社数は300社を超えたとのことだ。

エッジ、クラウド、データの課題を解決するHPEのDX

あらゆるベンダーがDXの支援を掲げているが、HPEが描くDXとはどのようなものなのだろうか。

望月氏は「われわれはエッジ、クラウド、データというメガトレンドに対応していくための戦略を掲げている」と語る。前述したように、エッジは2ケタ成長を維持している。

クラウドについては2つの大きな命題があると述べた。1つは「ハイブリッドクラウドの最適化」だ。「ハイブリッドクラウドを最適化できていない企業が多い。アプリケーションやデータの可搬性が持ててはじめて最適化できたと言えます」と望月氏。

もう1つの命題は「オンプレミス環境のクラウド移行」だ。クラウドファーストと言われるが、企業が抱えるワークロードの7割がクラウドに移行できていないという。移行できない事情もあるが、企業はこうしたワークロードもクラウドのように従量課金制で使いたいと思っているとして、HPEは解決策を提示していく。

そしてデータについては、競合優位性を担保するため全社にまたがる活用基盤を作り、そこにインテリジェンスを載せて、洞察を導く仕組みを構築していく。

こうしたエッジ、クラウド、データにおける課題を解決するソリューションを提供するのがHPEのDXだという。