2倍の生産能力を確保した新塗装工場
板金事業などを手掛けるOKIシンフォテックは福島県福島市笹木野に所在する筐体工場の大規模なレイアウト変更および塗装工場の新設を行った。新工場は2021年11月より稼働も開始している。
同社は、板金設計製造を行っていたOKIメタルテックと電源装置設計製造を行っていたOKIテクノパワーシステムズが合併し、2020年4月1日より社名も新たにOKIシンフォテックとしてスタートした企業だ。合併後の主力事業の1つである板金事業では設計、塗装、加工、組み立てなどを一貫して行えることが強みだ。
今回、塗装品の売り上げ拡大を目的に、筐体加工の強化と塗装の生産能力の拡張、大型筐体への塗装に対応するため、工場のレイアウト変更と塗装工場の新設を行った。
同社の代表取締役を務める馬田宗明 社長は「板金事業を拡大していくにあたり、ただ板を抜いて形を作るだけでは、付加価値がつけられない。塗装までを自社で行うことで付加価値をつけ、1件あたりの売り上げをあげていきたいという意図があった。そのために塗装の質と量の両方をあげる必要があった」と塗装工場を新設した意図を語る。
新設された塗装工場は、溶剤ブースを4つ、焼き付けブースを4つ、乾燥炉を3つ、粉体ブースを2つ備えており、従来比で2倍の生産能力を確保しているという。中でも粉体塗装は厚塗りが可能なため、主に屋外筐体の塗装に向けたニーズに対応を狙って、強化を図ったという。
馬田社長は「設備投資が必要なため、塗装業務に新規参入する会社は実は少ない。一方で、他社と差別化を図るためにその会社独自の色を塗装したいというクライアントニーズはあるため、まだまだビジネスチャンスはあると見ている。また、屋外筐体については厚く塗る必要があるなど特有のノウハウが必要なため、塗装を手掛ける企業の中でも屋外筐体を塗装できる会社は少ない。その点でも、特に道路関係や屋外の充放電装置のニーズは世の中的にますます高まると考えており、当社の屋外筐体に向けた塗装技術が活用できると思っている」という。
また、溶剤塗装ブースは以前より大型のものを設置することで、これまで難しかった大型製品への対応も可能とした。
塗装のクオリティという部分でも、最新の換気設備を導入することで塗装面へのごみ付着を低減。これにより塗り直しの回数を減らすことができるようになったことに加え、塗装ブースの大型化により、移動や取り回しの自由度が増したことで、細かな部分などに対しても塗りやすくなったという社員からの声も聞こえてきているという。
社員にも環境にも優しい工場に
生産能力だけでなく、新工場では環境にも配慮がなされた取り組みが取り入れられている。
例えば電気のみを新工場のエネルギー源とすることでCO2排出量の大幅削減につなげたとするほか、板の洗浄工程では、従来は苛性ソーダやリン酸塩といった化学物質を用いていたが、新工場ではアルカリ電解イオン水を用いることで化学物質の使用量低減を図ることを実現したとのことだ。
環境への配慮に加え、馬田社長は、「以前の塗装エリアは古く、夏は暑く冬は寒いと職場環境も良くなかった。従業員からもなんとかしてほしいという声が上がっており、環境を良くした塗装工場の新設は従業員との約束だと感じていた。ワンフロアにして従業員の移動を楽にし、空調設備も整えた新工場をオープンさせることができ、従業員満足度という観点からもやってよかったと思っている」と従業員満足度の観点からも塗装工場の新設の意義について語ってくれた。
今回の工場の新設やレイアウト変更を担当した同社の生産管理部の山科良宣 部長は、同工場が目指す次の構想について、「今までは塗装工程がボトルネックとなっていたが、今回の新設で強化できた。そのため次はその前の工程である“抜き行程”の自動化を図りパワーアップさせていきたい」と展望を語ってくれた。
大型装置などの市場ニーズに対応しながら環境への配慮や従業員満足度にも応える工場を新設したOKIシンフォテック。同社の今後の動きに注目だ。