新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とノベルクリスタルテクノロジーは12月24日、アンペア級・1200V耐圧の「酸化ガリウムショットキーバリアダイオード」(β-Ga2O3SBD)を開発したと共同で発表した。

同成果は、ノベルクリスタルテクノロジーの研究開発チームによるもの。詳細は、(日本)応用物理学会が刊行する英文学術誌「Applied Physics Express」に掲載された。

β-Ga2O3は、シリコンに代わる高性能材料として研究開発が進められている次世代半導体素材で、SiCやGaNと比べて、より低損失で低コスト、小型、高効率のパワーデバイスが期待されており、盛んに研究開発が進められている。

これまでβ-Ga2O3SBDの大電流化開発には、プロセスが比較的容易なプレーナ型構造が用いられてきたが、プレーナ型SBDはリーク電流が大きいため、耐圧1200VのGa2O3SBDを作製するのが困難だったという。それに対しノベルクリスタルテクノロジーでは、2017年に逆方向リーク電流を1000分の1に低減するトレンチ型Ga2O3SBDの原理実証に成功し、その耐圧向上と大電流化を進めてきたという。

今回の研究では、研究試作ラインとファウンドリを併用することにより、2インチウェハでの量産対応プロセスを開発。順方向電流IF=2A(VF=2.0V)、耐圧1200V、低リーク電流<10-9Aのトレンチ型β-Ga2O3SBDの試作に成功したという。

これにより、現在ノベルクリスタルテクノロジーが進めている100mmファウンドリラインを用いた量産プロセスの開発と、実装回路レベルでの1200V耐圧のβ-Ga2O3SBDの性能・信頼性評価が可能となり、低損失β-Ga2O3パワーデバイスの製品化が進むことになると研究チームでは説明している。

なお、同社は、今回試作に成功した1200V耐圧のβ-Ga2O3SBDの製造プロセスの確立と信頼性評価を進め、2023年の製品化を目指す予定としているほか、2021年6月に販売を開始した高品質β-Ga2O3100mmエピウェハを用いて、100mm量産ファウンドリラインの構築を進めるとしている。

また、今回の成果の適用が見込まれる中高耐圧高速ダイオード市場に対しての参入を図っていくことが期待されるようになるほか、今後、高電圧化・大電力化の必要性が増すことが想定される次世代急速充電器などのアプリケーションに対し、今回の成果を用いた高耐圧β-Ga2O3SBDの適用が期待されるともしている。

  • 2インチウェハに作製されたアンペア級・1200V耐圧の酸化ガリウムショットキーバリアダイオード

    (左上)2インチウェハに作製されたアンペア級・1200V耐圧の酸化ガリウムショットキーバリアダイオード。(右上)β-Ga2O3トレンチ型SBDの断面構造図、光学顕微鏡画像。(下)β-Ga2O3トレンチ型SBDの電流-電圧特性。(a)順方向電流-電圧特性。(b)逆方向電流-電圧特性 (出所:ノベルクリスタルテクノロジーWebサイト)