星の表面の大爆発「スーパーフレア」を、太陽と似た星で、光を波長別に検出する分光観測により可視光で捉えることに初めて成功した、と国立天文台、京都大学などの研究グループが発表した。爆発時に電気を帯びた粒子が噴出してできる構造「フィラメント」も確認。スーパーフレアで放出される放射線や粒子は、周囲の惑星に大きな影響を与える。成果は、かつて太陽が地球の大気にどう影響し、生命が生きる環境ができたかなどを考える手がかりになるという。
太陽の表面では磁場のエネルギーが解放され、フレアと呼ばれる爆発が頻繁に起きている。エックス線などの強い放射線や、電気を帯びた粒子を放出する。現在の最大級のフレアの10倍以上のものがスーパーフレア。もし今の太陽で起こると、地球では磁気嵐が起こり停電や通信障害、人工衛星の故障などが発生し、大混乱に陥ると懸念される。かつて起こったスーパーフレアは地球の大気や生命の存在に大きく影響したと考えられるが、詳しいことは分かっていない。
こうした中、研究グループは京都大学岡山天文台(岡山県浅口市)の「せいめい望遠鏡」を中心に地上と宇宙の3つの望遠鏡を使い、過去にスーパーフレアが起きた太陽型の星「りゅう座EK星」を観測した。スーパーフレアはいつ起こるか分からないため、昨年2~4月の長期間続けた。太陽が46億歳であるのに対し、この星はおよそ1億歳と若い。
その結果、4月5日にスーパーフレアを捉えることに成功した。このデータを太陽のフィラメントと比べたところ、水素原子が放射する光の変化がよく似ていた。このことから、太陽型の星でフィラメントが発生したと結論づけた。規模は、太陽の最大級のものの10倍以上。太陽型の星のスーパーフレアを可視光で分光観測したのは世界で初めてという。物質ごとの温度や運動の速度を把握でき、現象を詳しく分析できる分光観測により、フィラメントの発生まで判断できた。
この成果により、若かったかつての太陽が、周囲の惑星に今よりも大きな影響を与えていた可能性が浮かび上がった。特に、生命が生きる惑星環境の成立や維持への影響の理解につながる。現在の太陽がスーパーフレアを起こした場合の影響を考えることにも役立つという。
研究グループの国立天文台の行方宏介特別研究員は「驚くほど鮮明なデータが得られた。将来的には発生頻度や、惑星が影響を受ける程度を明らかにすることを通じ、生命誕生の解明や、文明社会に貢献できそうだ」と述べている。
研究グループは国立天文台、京都大学、兵庫県立大学などで構成。成果は英天文学誌「ネイチャーアストロノミー」の9日付に掲載され、国立天文台などが10日に発表した。
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