前回は、音声アシスタントが自動運転車においていかに重要な役割を果たすか、特にMaaS(Mobility as a Service)については、進化する車室(キャビン)と拡張するセンサーベースの性能について説明しました。後編となる今回は、今後さらに期待される車とのコネクティビティと未来の自動運転車について説明します。
マルチモダリティの重要性
ドライバーと乗客に様々な交流の可能性を提供することは、自動運転車内で起こり得るユーザ―エクスペリエンスの改善に大きな可能性をもたらします。
CES2020でCerenceは、音声技術と、スマートウィンドシールド上でのピンチやスワイプといったハンドジェスチャーを組み合わせることによって、自動運転車のマルチモダリティをリードしていくという意向を示しました。
さらに、独自の視線検知出技術Cerence Lookがユーザーの意向、例えばドライバーがホテルを見ながら「あのホテルの宿泊料は一晩いくら?」と聞けば、「宿泊料は一晩100-150ユーロです」と返答するといったように、いかにして音声アシスタントがユーザーの意向についての理解を深めることができるかを明らかにしました。このような例からも、マルチモーダルインタラクションが貢献する未来の自動運転を垣間見ることができます。
ボイスコマース(音声商取引)が生み出す新しい自動車の在り方
目線の高さが購買のレベルとよく言われます。自動運転では、視線は道路上である必要がなくなるため、車内でのユーザーエクスペリエンスがオンラインショッピングの形として小売業者に、例えば売れ筋の洋服が日々の通勤服になるといったさらなる機会を与えることになるでしょう。
Cerenceでも、すでに車内で行う商取引のブームに備えてCerence Payを考案しました。これによりドライバーは駐車料金、ガソリン代、充電代、食品代などを音声で安全かつ確実に商取引ができるようになります。
また、Cerence Tour Guideを使えば、ドライバーは音声でイベントや観光名所へのチケットを予約することができるようになります。ドライバーが通常車内で必要とすること以外にも、ロケーションベースの宣伝広告や地域特定をして、車の内外にダイナミックな独自の広告を出すこともできるようになります。現在よく見かけるソーシャルメディアプラットフォームのようなものです。
想像してみてください。2時間の通勤の間、お気に入りのサッカーチームの新しいユニフォームを近くのビルの横で見かけたり、夏休みに絶対に行きたいと考えていた所へのお得な航空券の案内がフロントガラスに表示されるようになるのです。自動運転車は、通勤経路をバーチャルでインタラクティブなスーパーストアへと変貌させるのです。
バーチャルボイスを搭載した自動運転車の未来に見る興味深いトレンドは、従来と全く異なるその外観です。近年は、三菱の産業用ロボットコンセプトやトヨタのFun-Vii(ファンビー)といった人間に近いアシスタント、VW Vizzionのよりアブストラクトなホログラムを使用したアプローチも見られます。
自動運転車の、より「フィジカル」な外観をもつことの利点は科学的なリサーチ、特にシステムの透明化を見れば明らかで、その結果として自動運転車に対する信頼を高めるのです。
このようなトレンドを考えると、いつの日か車のドアを開けるとバーチャルなコンパニオンがダッシュボードに座っていて、ドライバーの一言一句に従う準備ができていても驚かないでしょう。近い将来に起こり得るであろう、このような車載型「音声」の変革がなくなることはありません。
音声アシスタントの需要は、テクノロジーのさらなる発展、車の完全自動運転化、車のコネクティビティとともにさらに高まるでしょう。車の中から何かを変更したりスマートホームから変更するにせよ、または長時間の通勤の間にネット上の友達とチャットしたいといったニーズだけでも、音声アシスタントがいつもそばにいて、支援してくれる可能性が高いのです。「さあ、Cerence、次のブログ記事を読んで。リラックスモードを作動して」というコマンドが実現する日も近いかもしれません。
著者プロフィール
ダニエル・クレイベン(Daniel Craven)Cerence
エンドユーザ・エクスペリエンスチーム
リサーチャー