マレーシアで12月中旬に記録的な豪雨で洪水が発生したことを受け、水晶振動子大手の日本電波工業(NDK)は2021年12月20日、現地にあるグループ子会社2社の工場が浸水被害を受け、操業を停止したことを明らかにした。また、半導体アッセンブリ装置メーカーである蘭BE Semiconductor Industires(BESI)の工場も同様に浸水被害を受け、出荷直前の多数の装置が被災したことを明らかにした。

車載および民生品向け水晶振動子の出荷に影響が出る可能性

日本電波工業の浸水被害にあった工場は、セランゴール州にある子会社Asian NDK Crystalの水晶振動子などの製造工場ならびに、同州にある子会社NDK Quartz Malaysiaの水晶片などの製造工場。いずれも12月18日まで降り続いた大雨により浸水したという。発表段階でいずれの工場も水が引き、復旧作業が進められているとするが、多くの製造ラインが浸水したことから、生産再開までに時間を要する見込みだとしている。

Asian NDK Crstalは、同社グループ全体の水晶振動子生産の約1割を担っており、主な用途は車載と民生品向けとしている。また、NDK Quartz Malaysiaはグループの生産会社に向けて、グループ全体の約2割に相当する水晶片を供給しているという。なお、被害額については現在調査中だとしている。

出荷直前の半導体後工程装置60台が被災

一方のBESIのマレーシア工場もセランゴール州にあり、日本電波工業と同様に浸水被害にあったことを明らかにしている。その結果、約2500万ユーロの価値を持つ約60台のダイアタッチ装置が浸水のため最終組立作業を中断しているという。これらの装置はすべて、2021年第4四半期にマレーシアおよび海外のOSAT(組立・検査受託業者)に出荷される予定であり、雨がやんだ12月19日以降、速やかに修復作業を開始したとしている。

BESIによると、この洪水の影響により、2021年第4四半期の予想売上高が、前四半期比で約15〜20%減する可能性があるとしている。また、被害を受けた装置の修理または複製のために必要な材料と労力に関連するコストは、現在、400万から600万ユーロほどと見積もられているほか、建物および生産関連機器の修理には200万ユーロほどが必要と見積もられているとしている。

なお、同社は、2021年第4四半期における受注額が、前年同期の1億5730万ユーロを上回る1億8000万〜1億9000万ユーロと好調に推移していることを明らかにしているが、今回の被害によりダイアタッチメント装置のOSATへの納入が遅れることが予想され、世界的な半導体不足にさらなる影響が出る可能性が懸念される。