未来の道路は、おそらくさまざまなレベルの自動運転車であふれかえることでしょう。移動の仕方を一変させる自動運転車ですが、車載音声アシスタントにはどんなものがあるのでしょうか。一般的に音声アシスタントの車内での最も重要な役割は、ドライバーの注意散漫を減らすことですが、その機能は、現在そして未来に向けて考えられているよりはるかに広範になると言えます。

音声インタフェースは、速度、柔軟性、よりヒューマンライクな人と機械のインタラクションだけでなく、ドライバーと車との感情的なつながりを強め、信頼できるデジタルなコンパニオンとしての認知度の向上を続けます。自動運転車の場合は、ドライバーが今までしてきた車のコントロールが不必要となった事に慣れて安心してもらえるようにしていきます。

最新の科学研究を活用した自動運転車に見られる傾向を見据え、さらにCerenceの自動運転用音声ベースの経験における技術革新をもって、より強めたコネクティビティと未来の自動運転車における音声アシスタントから何が期待できるのかを説明します。

  • 自動運転による走行時のイメージ

    自動運転による走行時のイメージ

ドライバーが乗客になる日

近年開発された様々な乗用車に未来の自動運転車の運転席(コックピット)を垣間見ることができます。

メルセデス・ベンツF015コンセプトカーで見られる回転する座席、画面から飛び出すように現れるワークエリア、ヒョンデ(2020年よりヒュンダイから呼称変更)IONIQのコンセプトキャビンの天井に取り付けられたガラスパネルスクリーン、ボルボ360cが実現したフルフラットにして眠ることができるエリア、といったように、自動車業界は明らかに、ドライバーがステアリングホイールの前に座る必要がなくなる時代に備えています。

柔軟性の高い空間へと進化していくことが期待される自動運転車とともに、音声コマンドは車内のどの位置からでも素早くかつフレキシブルにインタラクションできる可能性を追求します。物理的なインタフェース無しに、そして目をつぶってでもできるようになるでしょう。AI (人工知能)のより一層の自動化と進化は、音声アシスタントをドライバーの好みに合わせることも可能にし、アシスタントを超えてまるで同乗するコンパニオンのように、パーソナルなUX(ユーザーエクスペリエンス)が体験できます。

インテリジェントボイス(自然対話型音声認識)

様々な車両検知センサーと音声アシスタントとの統合を深め、将来的にはそれぞれがつながることで、音声アシスタントはそれらを取り巻くインテリジェントコンポーネントともつながる可能性を開きます。例えば、他の道路利用者のアクションを予測する機能と、Cerence Look(視線検知)やNLU(自然言語理解)といった技術が、車とドライバー間をよりスムーズな移動状況へと導きます。追い越しをするための運転操作の引き継ぎ要請をドライバーは受けるが、ドライバーはEメールを書くのに忙しいというような場面を想像してみてください。

ドライバー:「引き継ぎに30秒必要だよ」
自動運転車:「了解しました。準備ができたら「テイクオーバーコントロール(操作を引き継ぐ)」と言ってください」

あるいは、ドライバーが仕事に遅れそうな中、自動運転車はセンサーがブロックされているために追い越し操作を行わない、という場面を想定してください。ドライバーは、視線検出技術を活用して指示を出します:

ドライバー:「前方の白いバンを追い越したら近道を取って」

どちらの場面もドライバーは、車両に組み込まれたスマートコンポーネントを使って、さらに最小限の手間かつ物理的なインタフェースを使うことなしに、いくつかのシンプルな音声コマンドを実行するだけで自動運転車に込み入った指示を与えることができます。

MaaS(Mobility as a Service)

交通は今まさに必要不可欠なトランスフォーメーションの最前線にあります。人口増加と気候変動がもたらす不穏な影響により、公共および私的移動サービスは必要かつ極めて重要な移動の解決策です。

CES 2020でCerenceは、パートナーであるe.GO MOOVE、e.GO DigitalさらにSaint-Gobain Sekuritとともに、MaaSに向けたビジョンの一部を展示しました。2021年後半をめどに電動の自動走行シャトルバスの生産を開発するe.GO MOOVEとともに、この分野では初めての透明スクリーンガラス技術を使って、主要な情報を車両の中と外側に表示する機能が実現されました。

Cerenceの自然言語理解(NLU)技術により、乗客は、e.GO MOOVEのバスの内部と外部に多様な言語でフレキシブルなコマンドが表示されます。自然でわかりやすい体験が信頼と信用を獲得します。

このように音声アシスタントは、テクノロジーのさらなる進化、車両の自動化とコネクティビティといった無限の可能性を秘めています。後半となる次回は、今後さらに期待される車とのコネクティビティと未来の自動運転車について説明します。

(後編に続く)

著者プロフィール

ダニエル・クレイベン(Daniel Craven)
Cerence
エンドユーザ・エクスペリエンスチーム
リサーチャー