キーサイト・テクノロジーは12月20日、数百個の小型RF(無線周波数)フロントエンドを組み合わせ、最大512個のオブジェクトと1.5mの近距離エミュレーションを実現したレーダ・シーン・エミュレータを発表した。

同社のオートモーティブ&エナジー・ソリューション事業部の高野修平氏は「今までのレーダターゲットシミュレータは1個のアンテナを車だとみなし、ロボットハンドなどで位置を変えることでシミュレーションを行っていたが、今回のレーダ・シーン・エミュレータは最大512個のオブジェクトでレーダが本来受け取るべき反射波を表現することができる」とその特徴について説明する。

  • レーダ・シーン・エミュレータ

    レーダーDUTから1m以内に64×8アレイのRFフロントエンドが配置され、外部からの不要な干渉を遮断する暗室に収められたダイナミックレーダスクリーンをCGで表現した画像 (提供:キーサイト・テクノロジー)

同ソリューションは、ターゲットシミュレーションによるオブジェクト検出を中心としたアプローチから、交通シーンのエミュレーションへと移行する特許技術を採用することで、これまでレーダセンサを限られた数のオブジェクトでテストする場合、走行シナリオが不完全で、現実世界の複雑さを表現しきれなかった問題を、交通密度、速度、距離、ターゲットの総数を変化させて、実環境の走行シーンをエミュレートすることを可能としたという。

また、レーダセンサの広い連続したFOV視野に対応し、近距離と遠距離両方のターゲットエミュレーションをサポートしているため、レーダの視界の隙間をなくし、密集した複雑なシーンで複数のオブジェクトを検出・識別するアルゴリズムのトレーニングを向上させることも可能。これにより、全体像に基づいて自動運転車の意思決定を行うことができるようにもできるという。

さらに、現状、実際の道路上でしかテストできないような複雑なシーンをラボ内でテストできるようになるため、手動またはロボットによるアンテナの配置の非効率性を感じることなく、ADAS/ADアルゴリズムの学習を加速することも可能だとしている。

なお、販売開始時期は2022年2月を予定しており、同年8月より出荷を開始する予定だとしている。