日本オラクルは12月17日、基幹システムのクラウド基盤「Oracle Cloud Infrastructure」への移行を無償で支援するプログラム「Oracle Cloud Lift Services」に関する説明会を開催した。
同プログラムは今年7月に発表されたもので、技術提供のための単一の窓口を用意し、移行に必要なツールやエンジニアリング・リソースを提供する。日本オラクル 常務執行役員クラウド・エンジニアリング統括 竹爪慎治氏は、同プログラムの目的は3つあると語った。
1つ目の目的は、新規顧客の支援だ。竹爪氏は、「オラクルはクラウド市場においては後発であるため、お客さまとパートナーの双方において、OCIに関するノウハウが十分ではない。よって、Oracle Cloud Lift Servicesによって、ノウハウをトランスファーする」と語った。
2つ目の目的は、クラウド利用開始までの期間短縮とリスク低減だ。リスクを最小限に抑えてクラウド移行を実現することで、データ活用、新しい価値創造につなげることを目指す。
3つ目の目的は、顧客の満足度の向上だ。竹爪氏は「クラウドは継続して利用してもらう必要がある。Oracle Cloud Lift Servicesを提供することで、顧客に安心感、納得感を持ってもらって、満足度を維持したい」と述べた。日本でも「Oracle Cloud Lift Services」を利用している企業は出てきており、その例として、損害保険ジャパン、戸田建設、日産自動車が紹介された。日産は「Oracle Cloud Lift Services 」を活用することで、HPCアプリケーションをOCIに全面的に移行するにあたり支援を受けたという。
「Oracle Cloud Lift Services」は、「ケーススタディ支援」「フィジビリティスタディ支援」「実機検証(PoC) 支援」「早期立ち上げ支援」という4つのサービスから構成されている。これらのうち、「ケーススタディ支援」「フィジビリティスタディ支援」は日本市場向けに拡張されたものだ。
竹爪氏は「グローバルでは契約後の支援を対象としているが、日本は契約前のサービスを拡張した。なぜなら、クラウドのノウハウをトランスファーすることが重要であるため、OCIの成功事例を紹介する中で、クラウド移行のポイントなどを伝えていく」と、日本独自のサービスを拡張した狙いを説明した。
「フィジビリティスタディ支援」では、ヒアリングやワークショップによってクラウド化を検討する際の不安や懸念を整理し、検討時間の短縮や検討のためのリソース不足の解消に貢献する。成果物として、「クラウドアーキテクチャ図」「OCI概算費用」などを提供する。
「フィジビリティスタディ支援」では、机上で確認できない項目や内容について、クラウド実機検証(PoC)を支援する。その支援モデルは、オラクルのエンジニアが「環境のプロビジョニング」「パラメータヒアリング」「PoC 内容検討支援」を行う基本モデルのほか、エンジニアの行うメニューが異なる「フル支援モデル」「QA支援モデル」が用意されている。ユーザーは自社の方針に合わせて、支援モデルを選択できる。
竹爪氏は、「基幹システムのクラウド移行は、お客さまが主導することがキーワードとなるが、システムの現状を把握して、移行を進める上でパートナーは必須となる」と述べ、「Oracle Cloud Lift Services」のパートナーについて説明した。
「Oracle Cloud Lift Services」のパートナーにはいくつかパターンがあり、「Oracle Cloud Lift Services」を活用してサービスを提供するパートナーとしては、アクセンチュア、伊藤忠テクノソリューションズ、SCSKがいる。また、自社のクラウド移行サービスに「Oracle Cloud Lift Services」を組み込んで提供するパートナーとしては、NTTデータ先端技術やNECがいる。NECとは今年10月に基幹システムのOracle Cloud移行での協業強化を発表した。
竹爪氏は同社が基幹システムのクラウド移行を3つのステップに分けていることを示した上で、「Oracle Cloud Lift Services」の今後の展開について、次のように語った。
「現在は最初のステップが中心だが、第2のステップに達している企業もある。今後、データの付加価値の活用、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進にステップは移っていくと考えられ、Oracle Cloud Lift Servicesはここまで支援できるサービス。データサイエンスやAIを活用したデータ、クラウドネイティブのアプリ開発の支援など、今後は支援の幅を拡張していく」