コロナ禍を契機としたリモートワークの拡大を経て、今後はリアルとリモートが混ざり合ったハイブリッドワークが主流になると予想されている。
9月28日にオンライン開催されたTECH+スペシャルセミナー「社内外の環境変化に対応できる労務管理へ」の特別講演で、PwCコンサルティング(以下、PwC)People Transformation シニアマネージャー 土橋隼人氏は、ハイブリッドワーク時代における従業員のエンゲージメント向上のためのポイントについて、PwCのサーベイ結果などを交えながら解説した。
デジタル環境の変化に順応できていない日本
コロナ禍によって普及したリモートワークを恒久的な働き方の選択肢として導入することを考えている企業は多い。一方、日本において、リモートワークで生産性高く業務を行うためのデジタル環境は、他国と比べて大幅に遅れているというPwCの調査結果もある。例えば、「高度なテクノロジーを利用してリモートで実行できる仕事の要素はありますか?」という質問に対して、日本は「ある」と回答した人の割合が40%と調査対象国のなかで最低。「テクノロジーの活用に順応できる自信がどの程度ありますか?」という質問に対しては、「とても自信がある」と回答した人の割合がわずか5%となっている。
日本企業はこうしたテクノロジーを取り巻く厳しい状況を克服し、コロナ禍の収束後を見据え、リアルとバーチャルを融合した新たな時代のワークスタイルを実現していく必要がある。リアルの場では、対面だからこそ実現できるコラボレーションや新たな化学反応を生み出すように、バーチャルでは、実効性を最大限に高め、従来以上の生産性を実現するようにしていかなければならない。
“Employee-centric”で考える
土橋氏は、こうしたハイブリッドな形のワークスタイルを実現するためにポイントとなる考え方を3つ紹介する。
1つ目は、「Agile/Flexibility」。多様な従業員が時間や場所に縛られずに柔軟性高く働くことができるワークスタイルをいかにデザインするか、という発想だ。2つ目は、「Well-being」。従業員が精神的・身体的健康を保持しながらエンゲージメント高く働くことができるワークスタイルをいかにデザインするか、という視点である。そして3つ目が、「Digitalinvestment」。デジタルツールを活用することでバーチャル環境下においても生産性高く働くことができるか、という考え方だ。土橋氏は「これらのポイントを、従業員の目線に立って考える“Employee-centric”で考えていくことが重要」と主張する。
そして、これらを検討していく上でキーワードとなるのが、「従業員体験(EX:Employee Experience)」である。EXは、従業員が企業組織との間で体験・経験することの内容や価値を指す概念で、人材獲得競争の激化、人材の多様化、デジタル化の進展、顧客ニーズの変化という主に4つの観点から重要だとされている。