岡山県倉敷市を拠点に受託ソフトウェア開発および自社プロダクト開発を行うピープルソフトウェアは、「LegalForceキャビネ」を導入して社内における契約書の利活用を促進している。そこで、同社の経営推進本部で本部長を務める山本博昭氏に、同社がどのようにして契約書を有効活用しているかについて聞いた。
LegalForceが提供する「LegalForceキャビネ」はAIによる契約書の管理が可能なシステムだ。締結済みの契約書をクラウド上にアップロードすることで書類をテキストデータ化し、管理台帳を自動で作成する。ピープルソフトウェアはこれまで、10年以上にわたって契約書管理台帳をファイルサーバ上に保存したExcelファイルで管理していたという。ファイルのデータはバックアップを取っているもののリアルタイムに反映されるわけではないので、原本の同一性が担保できないことに加えて、「複数人で同時に編集できない」「誰がファイルを操作中なのかを可視化できない」といった課題を抱えていた。
時には、社内で「誰がファイルを操作しているか」を訪ねるチャットが飛び交う場面もあったとのことだ。また、Excelファイルに記載する内容が担当者によって異なっていたり、担当者が忙しい場合には契約番号と案件名だけしか入力されていなかったりと、契約書原本を探す際の検索性が悪いことによる不満もあった。
そうした中で、Googleスプレッドシートや他社の契約書管理ツールを導入してみたものの、内容を入力する作業は人の手で行わなければならないため、作業者によって記載内容の濃淡が異なるという課題は残り、依然として入力内容のメンテナンスが必要な課題の根本的な解決には至らなかったそうだ。
LegalForce社との出会いは2020年に開催された大阪での展示会だ。同社の代表取締役CEOである角田望氏が参加した対談を聞き、「AI」というキーワードと「事務作業の効率化」を掛け合わせたサービス「LegalForceキャビネ(当時のサービス名称は『Marshall』)」に興味を持ったという。
「システムの導入によって契約書をデータ化できるようになったことで、契約書をただ保管しておくのではなく、契約更新の際に契約上の課題を見つけ出して相手に改善を提案するような、契約を利活用するという発想を持てるようになりました」と、山本氏はいう。契約内容の変遷や他社の事例との比較を確認しやすくなるなど、以前よりも契約書を利活用できているとのことだ。
必要な契約書を探す際に複数のファイルを開いて検索する必要がなくなっただけでなく、必要な条文の検索にも対応するため作業の効率化を実現しているとのことだ。契約書のPDFデータをアップロードすると自動で契約情報がシステムに反映されるうえ、AIが読み取った部分をハイライト表示するので、当該箇所の確認のみで作業が完了する機能も業務効率化に一役買っている。
ピープルソフトウェアの独自の運用として注目すべきは、法務担当者だけでなく営業担当者など他部署の従業員も同システムを使用できる体制を構築している点だ。法務担当者は契約上の義務や責任範囲の説明を確認する際に閲覧したり、新たに書類を作成する際の参考にしたりしている。営業担当者は自分が担当する特定顧客の過去の取引を閲覧して活用しているとのことだ。
一般的に、法務担当者は過去の事例や条文を基に独自のネタ帳を作成していたり、モデルケースが掲載されている書物を購入して参考にしたりしているケースが多いようだ。しかし、「LegalForceキャビネ」には、過去に自社の法務担当者がレビューした契約書が蓄積されており、独自のノウハウや事例が格納されている。
「契約書は保管するだけではもったいない。次のビジネスを作るための武器にもなると思います」と同氏は話した。
同システムには紙の契約書だけでなく、さまざまな電子契約サービスで締結した契約書なども流入する。そこで同氏は、アップロードしたPDFデータがどのシステムを経由したものかを管理できる機能を求めているという。電子的に締結した契約書なのか、紙の契約書であるのか、あるいは、電子契約書であればどのサービスにより締結された契約書なのかを管理したいとのことだ。