米国半導体工業会(SIA)は、12月1日(米国時間)付けで米国通商代表部(USTR)に意見書を提出し、半導体不足を悪化させ、経済を減速させる要因となっているとして、通商法301条に基づいてかけられている25%という半導体における対中関税賦課の撤廃を求めたことを発表した。
SIAでは、半導体および関連製品に対する301条に基づく関税は、現在の世界的な半導体不足の一因となっており、価格上昇につながり、米国の消費者や米国の自動車、電化製品、医療機器、その他の産業に損害を与えていると述べている。これまでもSIAは、何度もSEMIなどの関連団体も交え、米国政府の中国半導体制裁や半導体関税に反対する声明を出してきたほか、ロビー活動も続けている。
SIAは「新型コロナのパンデミックに起因する2020年後半から生じた世界的な半導体不足は、世界の半導体エコシステムの回復力を圧迫している。301条の関税は、サプライチェーンの混乱を助長する結果となっている。もっとも直接的な影響として、この関税は、対象となる半導体に25%の価格上乗せをさせる結果を生み、世界的な不足と需要の増加によって引き起こされる半導体価格のインフレの原因にもなっている。これは現在の世界的な半導体不足を悪化させ、顧客のサプライチェーンをさらに混乱させ、米国での半導体不足の影響を増長させている。また、半導体不足は、自動車はじめ半導体を搭載した最終製品組み立て工場の操業停止をもたらし、賃金と労働時間の削減という形で給与に影響を与えている」と関税のさまざまな弊害を挙げている。
また、こうした影響のみならず、「米国の半導体産業は、中国との一貫した貿易黒字を維持しており、実際、中国から輸入された半導体のほとんどは、米国の半導体企業が中国で所有ならびに運営する組み立て、テスト、およびパッケージング工場で加工されたものである。中国におけるこうした後工程は、半導体製造のもっとも付加価値の低い工程であり、これらの半導体のほとんどは、古く、ローエンドで、価値としては低い技術であるが、車載半導体などにも適用されていることから、中国からの米国の半導体および関連製品の輸入に対する301条の適用は、米国の製造業者および投資家に経済的損害を招いているのみならず、中国が不公正な慣行をやめる動機付けとしても役立っていない」と、中国政府への圧力になっていないことも指摘している。
半導体企業への資金提供法案の成立促進を財務省に要請
こうした発言をする一方でSIAは12月8日(米国時間)、CEOであるJohn Neuffer氏および上級役員数名が米国財務省のJanet Louise Yelle長官(財務大臣)を訪ねて、米国政府が520億ドル(約6兆円)規模の半導体企業への補助金支給を盛り込んだ「Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors for America Act(CHIPS for America法)」の早期成立を支援するように求めたことも発表している。
この会談を踏まえNeuffer CEOは12月9日付で、「財務省長官と会談し、国内の半導体の研究、設計、製造を強化し、経済全体の成長と革新を促進し、アメリカのチップサプライチェーンをより回復力のあるものにするための政策を推進することについて話し合った。米国での半導体製造とイノベーションを強化するCHIPS for America法への資金提供に対する財務省長官の支援を歓迎する。半導体の製造と設計を強化するために、同法による半導体への資金提供ならびに、投資に対する税控除の制定に向け、財務省長官や行政および議会の指導者と協力していきたい。これにより半導体技術における米国のリーダーシップを今後とも確保することができるようになる」とする声明を出している。
なお、Yelle財務省長官も「新たな法律を制定することで半導体の国内需要をどのように推進するか」についてSIA幹部と話し合ったことを確認する声明を8日付けで発表している。