プログラム言語「Ruby」を活用した、ビジネス領域で新たな価値を創造し今後の発展が期待できるサービスや商品を表彰するITビジネスコンテスト「Ruby biz Grand prix 2021」が12月15日に開催された。
プログラミング言語「Ruby」は、島根県松江市在住のまつもとゆきひろ氏が1993年に開発したもので、「開発者が楽しければ世の中がきっと楽しくなる」をモットーに開発を進めたという。島根県では「Ruby」を産業発展に向けた地域資源であると位置付け、Rubyを軸とした産業発展振興に取り組んでいるとのことだ。
7回目の開催となる今回のイベントは、昨年に続きオンラインでの開催となった。Ruby biz グランプリ実行委員会は、グランプリを通してRubyがもたらす革新性を国内外に広く発信し、IT産業全体の振興への貢献を目指す。
同イベントの実行委員長を務める井上浩氏は冒頭、「Ruby biz Grand prixによって世の中の多くのサービスがRubyで構築されるきっかけが生まれることを祈っている。ひいては、島根県内のビジネス拡大にもつながってほしい」と挨拶を述べた。
また、島根県の丸山達也知事は「島根県では若者世代に対して魅力ある雇用の場を提供するために、IT産業に力を入れている。Rubyの特徴を生かした優れたサービスを表彰することでRubyの優位性をアピールできればと思う。今回応募があった作品はどれも独創的で、将来が期待できるものばかりだ」と参加者に向けて賛辞を贈った。
イベントの大賞にはHIKKYとヤマップの2社が選出された。HIKKYが展開しているバーチャルマーケットは、メタバース空間内で展示会イベントを提供する。企業やクリエイターからの出店物をVR空間上に展示可能なイベントで、イベント開催期間中は1日当たり100万人以上の来場者がVR空間を訪れる。
バーチャルマーケット上のイベントを運営するためのシステムに加えて、出展者の商品を販売するECサイト、各マイクロサービスのバックエンドがRuby on Railsで構成されている。多くの人からアカウントを預かっている認証基盤にも「Ruby」を採用しているという。
HIKKYでバックエンドエンジニアを務める山本允葵氏は「当社が提供するバーチャルマーケットはRuby on Railsで構築を始め、これまで拡張性とセキュリティを両立しながらサービスを成長させてきた。引き続きRubyを利用してサービスを拡大したい」とコメントを述べた。
一方のヤマップは、オフライン環境でも使用可能なGPS登山地図アプリ「YAMAP」を提供している。スマートフォンに搭載されたGPSとアプリ独自の地図を利用して電波がなくても自己位置を特定可能だ。活動時間や距離、標高などのトラッキングにも対応する。
ヤマップの開発部門でサブマネージャーを務める杉之原大資氏は「当社は創業時からRubyで開発を進めており、現在も多くのシステムでRubyを利用している。今後もRubyを利用した当社のシステムで、1人でも多くの登山者の命を救えるようなサービスを提供したい」と述べた。
ビジネス現場の課題を解決するプラットフォームを展開し、イノベーションの創出や業務変革の実現に挑戦する企業に送られる「DX(デジタルトランスフォーメーション)賞」には、グループ通話サービス「BONX WORK」を提供するBONXと、新規事業創出を支援する「Throttle」を提供するReLicが選出された。
また、メディアの分野において、幅広い年代やジャンルのユーザーが楽しめる社会的インパクトの高いサービスを展開する企業に送られる「Digital Media賞」には、「ヤンマガWeb」を展開する講談社およびGlossomと、クリエイターが創作に専念できるプラットフォーム「note」を提供するnoteが選ばれた。
審査委員長を務めたまつもとゆきひろ氏は「近年は日本でもスタートアップブームと呼んでも良いような時代になった。特にWebサービスは次々にリリースされ、今回応募いただいたサービスもWebを中心にしたものが多かったと思う。もしこの世にRubyという言語がなくても、これらのサービスは生まれていたであろうが、Rubyの生産性や利点が少なからずサービスの充実に役立てているのではないかと自負している。今回応募があった企業をはじめ、Rubyを使用しているすべての企業を応援したい」と述べて、イベントを締めくくった。