二酸化炭素(CO2)をはじめとする国内の温室効果ガスの2020年度の排出量は、11億4900万トンで前年度比5.1%減だったと環境省が10日発表した。排出量の減少は7年連続で1990年度の統計開始以来最少だった。同省は新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の停滞を受け、企業などのエネルギー消費が減ったのが要因との見方を示している。

パリ協定に参加する日本政府は、2030年度までに13年度比46%減を新たな目標として10月に国連に提出した。最少を記録した20年度排出量でも13年度比では18.4%減で目標にはまだ遠い。

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    2020年度までの温室効果ガス総排出量の推移(環境省提供)

温室効果ガスはCO2のほか、廃棄物の埋め立てなどで出るメタンや、エアコンの冷媒などに使われる代替フロン、家畜の排せつ物管理などで生じる一酸化二窒素などがある。日本の排出量で最も多いのはCO2で全体の約9割を占める。

環境省によると、20年度の温室効果ガス排出量の種類別ではCO2が10億4400万トンで前年度比5.8%減。温室効果が種類によってはCO2の数千倍以上も強い代替フロンのハイドロフルオロカーボン類(HFCs)は5190万トンで4.4%増えた。

CO2の20年度の部門別排出量は、工場などの産業部門が3億5300万トンで前年度比8.3%減、自動車などの運輸部門が1億8500万トンで同10.2%減、商業、事業所などの業務部門が1億8400万トンで同4.1%減と大幅に減った。その一方で、家庭部門は1億6700万トンで同4.9%増となった。

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    CO2など温室効果ガスの種類別排出量の推移(環境省提供)

環境省は今回の結果について、新型コロナウイルス感染症の流行に伴うテレワークやオンライン学習の時間が増えるなど在宅時間が増えたことが影響したと見ている。同省関係者は「排出量が1990年度以来最低になったのは好ましいがコロナによる影響であることは明らかで、30年度の目標達成は現在の対策では難しい」と指摘。コロナ禍がある程度収まって経済活動が戻った後も、大胆な削減対策を実施する必要があると強調している。 

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