北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は12月13日、同大学が保有するスーパーコンピュータによるシミュレーションを用いて、より低コストな冷却で超伝導になる水素化合物を発見したと発表した。
同成果は、JAIST 環境・エネルギー領域の前園涼教授、同・本郷研太准教授、同・中野晃佑助教らの研究チームによるもの。詳細は、「Chemistry of Materials」に掲載された。
常温超伝導の実現に向け、高温超伝導体の研究が進められてきた。そうした中、より低コストな冷却で超伝導になりそうな高温超伝導体として、水素を含んだ結晶体が候補とされるようになってきており、最近ではコンピュータシミュレーションを用いて、どのような元素を水素と組み合わせたときに、低コスト冷却の超伝導体が実現できるかを予測する研究が進められるようになってきたという。
元素の組み合わせを2種から3種と増やしていくと、低コスト冷却に向けた未知の可能性は広がる。しかし、組み合わせが膨大となるため、シミュレーションをする上でそれだけ時間を要するようになっていく。その時間を短縮するため、研究チームでは、実現性スコアの高い構造が選択されやすいようにする探索技術である「遺伝的アルゴリズム」を用いて長らく研究を進めてきた。
2種構成化合物の範囲内では、ランタンやイットリウムが低コスト冷却を実現する材料に利用されていることから、研究チームは今回、遺伝的アルゴリズムを用いて、その2種類を含めた3種構成化合物の探索を実施。その結果、カゴ状の化合物をブロック状に組み上げた構造という、これまでに知られていなかった新しい構造で、低コスト冷却の超伝導体が実現する可能性が示されたとした。
コンピュータシミュレーションを用いることで、さまざまな元素を組み合わせて、未知の結晶構造が安定に存在できるかどうかを予測することが可能だ。
今回のシミュレーションを用いて、さまざまな元素を組み合わせることで未知の結晶構造が安定に存在できるかどうかの予測は、「超伝導が転移温度をなるべく高くなる(あまり冷やさなくても超伝導が発生する)」という条件で行われたが、研究チームでは、このほかにも所望の特性向上を実現するような、新しい元素同士の組み合わせを予測することもできるとしており、今後、遺伝的アルゴリズムなどを駆使することで、材料開発研究をさらに加速させることができるとしている。