「DXは“journey”。やり続けなければならないもの」——ブリヂストンでCDO(Chief Digital Officer)としてDXの推進・ビジネスモデルの変革を指揮し、現在は出光興産でCDO、デジタル・DTK推進部長を務める三枝幸夫氏は、11月24日に開催されたビジネス・フォーラム事務局×TECH+フォーラム「経営とIT Day 2021 Nov.」でこう語った。

DXを一過性の単なるデジタル化で終わらせないために、企業はどのようにデジタルと向き合うべきなのか。また、現場で出現するさまざまな壁をどう乗り越えれば良いのか。同フォーラムで三枝氏は、『IGPI流 DXのリアル・ノウハウ』(PHP研究所)の著者である経営共創基盤 共同経営者 望月愛子氏を聞き手に、DXの本質と推進の勘所について紹介した。

  • 左から、出光興産 執行役員 CDO・CIO情報システム管掌/デジタル・DTK推進部長 三枝幸夫氏、経営共創基盤 共同経営者 マネージングディレクター 望月愛子氏

2030年ビジョン実現のためにはDXが必要不可欠

2019年の昭和シェル石油との経営統合により事業規模・領域ともに拡大した出光興産。燃料油事業を主軸にビジネスを展開してきたが、2050年カーボンニュートラル(CN)宣言による脱炭素化の加速によって、大きな転換点を迎えている。

そこで同社は中期経営計画を見直し、2030年ビジョンに「責任ある変革者」を掲げ、地球と暮らしを守る責任として「CN・循環型社会へのエネルギー・マテリアルトランジション」、地域のつながりを支える責任として「高齢化社会を見据えた次世代モビリティ&コミュニティ」、技術の力で社会実装する責任として「これらの課題解決を可能にする先進マテリアル」という3つの責任を果たしていく意思を表明している。

  • 2030年ビジョン

そして将来的には、石油コンビナートの役割を、単なる石油の生産拠点ではなく、グリーンエネルギーの基地など循環型社会の拠点に変えていく構想を描く。同拠点は「CNXセンター」と名付けられており、ここから出てくる新しい価値を持った技術を社会実装することで、CN社会を目指していく考えだ。また同社は、現在のサービスステーションを、燃料油の供給責任を果たすとともに生活者視点の新しい価値が生まれる拠点にしていく「スマートよろずや構想」も打ち出している。

「CNXセンターやスマートよろずやから出てくるエネルギーや素材の技術、マーケットニーズを社会につないでいくためには、デジタルの力が欠かせない」と、三枝氏はこうしたビジョンの達成に向けたDXの重要性を語る。

以下では、三枝氏と望月氏との議論の一部を対談形式で紹介する。