三井住友銀行、米The Climate Service(TCS)、日本IBMは12月9日、気候変動に伴うリスク・機会分析サービスの提供を共同で進めることを目的とした覚書の締結を発表した。3社はサービス提供を通じて企業の気候変動開示を支援する。

米TCSは、気候変動関連の国際的な開示の枠組みを提示するTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)報告書のフレームワークに沿ったリスク・機会の分析および財務影響を定量化するサービス「Climanomics platform」を提供している。

TCFDでは、脱炭素に向けた行動計画などの開示を企業に求める指針を出している。国内においては、2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改定により、一部の上場企業に対して実質的にTCFDに沿った情報開示が要請されるようになった。

  • 気候関連リスクと機会が与える財務影響(全体像)

一方で、TCFDで求められるリスク・機会の分析や財務影響の定量化には、大量のデータ収集、定量化方法の検討など、専門性の高い業務知識と高いITスキルが必要となることからデジタルの活用は不可欠で、3社は同サービスがデジタル活用における課題を解決するソリューションになると位置付ける。

Climanomics platformは、テラバイト級の気候科学データと個々の企業の資産データを融合し、最大80年にわたり複数の気候シナリオを網羅する分析を提供する。猛暑、干ばつ、山火事、沿岸・河川洪水、熱帯低気圧、水ストレスなどの物理的リスクを評価でき、データをシンプルに可視化することで、財務定量化された気候リスクの場所、リスクの強度、および時期なども把握可能だ。分析内容や引用データなどは、クラウドを活用した同サービス上で確認できる。

三井住友銀行と日本IBMは2021年8月より、東京証券取引所の市場再編に伴い新設される「プライム」市場への移行を目指す企業を中心に、Climanomics platformを用いた実証実験を行っており、同実験から気候変動に伴うリスクの分析に対して一定の評価を得たことから、2022年明け以降のサービス提供について本格的な検討を開始する。