電気自動車(EV)における走行距離の延長と充電時間の短縮ニーズに向け、自動車メーカー各社は高電圧プラットフォームへの移行を進めており、800V充電システムを搭載したモデルも次々とアナウンスされている。

TrendForceによると、こうした高電圧への対応を背景に、自動車市場からの6インチ(150mm)SiCウェハに対する需要は年々増加傾向にあり、2025年には169万枚に達するという。

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    EV用150mm(6インチ)SiCウェハの需要予測 (出所:TrendForce)

同社によると、800Vの充電アーキテクチャの登場は、従来のSi IGBTモジュール方式からSiCパワー半導体への変更を後押しすることとなり、今後は主要な自動車部品サプライヤがSiCの採用を積極的に進めることとなるとみられるという。特に、Tier1サプライヤのDelphiはすでに800V SiCインバータの量産を開始しており、BorgWarner、ZF、Vitescoなどの他のサプライヤもそれぞれのソリューションで急速に開発を進めているという。

また、すでにEVはSiCパワーデバイスの中核的な応用分野になっており、STMicroelectronics、Infineon Technologies、Wolfspeed(旧Cree)、ロームなどのSiCパワー半導体サプライヤは、Tier1サプライヤや自動車メーカーと協力し、さまざまな車載機器への応用展開を進めているともしている。

なお、SiCウェハは、製造プロセスが複雑で、参入障壁が高く、エピタキシャル成長の速度が遅いため、SiCウェハそのものの供給がSiCパワーデバイス製造の主なボトルネックになるとされている。パワー半導体デバイスに使用されるn型SiC基板の大部分は、直径150mm(6インチ)で、一部、Wolfspeedなどのウェハメーカーが200mm(8インチ)SiCウェハの開発を進めているが、歩留まりの向上だけでなく、ファブ側の150mmラインから200mmラインへの移行にも時間がかかることもあり、少なくともあと5年ほどは150mmのSiCウェハが主流であり続ける見込みだという。