台湾半導体業界筋の情報として、TSMCが台湾南部の台南サイエンスパーク内のファブ18Bにて3nmプロセス(N3)を用いたパイロット生産(試作)を計画通り開始したと複数の台湾メディアが報じている。同社では2022年第4四半期までにN3での量産を開始する計画を掲げている。ちなみに、同サイエンスパークのTSMCファブ18Aでは5/4nmプロセスを用いた量産も行われている。

N3プロセスの生産枠を真っ先に確保したのは、Appleで次世代iPhone向けとされているが、AppleはMac向けM1 Pro/Pro Maxプロセッサ(5nmプロセス)の次世代品も3nmプロセスを採用する見込みとされている。また、Intelも自社による先端プロセスの開発・試作が遅延していることもあり、TSMCの3nmプロセスを採用した生産を委託する仮契約を締結したとも言われている。

TSMCが2021年6月に開催したTSMC Technology Symposium 2021にて発表したSystem-on-Integrated Chips(複数のチップを集積したいわゆる3D-IC:SoIC)のロードマップを見ると、SoCのロードマップのところに、2021年内にN3の生産開始が示されているほか、3D-ICであるChip-on–Wafer(CoW:ウェハ上にチップを配置した構造)およびWafer-on-Wafer(WoW:ウェハ上にウェハを接合した構造)の3D-ICのCoWのトップダイの項目に2023年にN3の文字が見て取れる。

  • SoIC

    TSMCのSystem-on-Integrated Chips(SoIC)前工程および後工程のロードマップ (出所:TSMC Technology Symposium2021発表資料)

Intelが12月中にもTSMC 3nmプロセスの生産枠確保に向けた本格交渉の可能性

一部の台湾メディアからは、Intel幹部が12月中にTSMCを訪問し、自社CPU/GPUの生産に向けて3nmプロセスの生産枠を確保することを目的とした本格的な交渉を行う模様という話がでている。IntelはTSMC 3nmプロセスを利用し、次世代CPUであるMeteor Lakeプロセッサの一部を生産すると噂されている(Meteor LakeはCPU、GPU、I/Oダイを3Dパッケージングで構成する計画)。

N3の初期の生産能力は限られていることもあり、それをAppleとIntelがどれだけ確保できるかで争っているようであり、AMD、Qualcomm、Boradcom、MediaTekなどの潜在的な顧客は2023年以降でないと3nmプロセスにアクセスできない見込みである。また、Huawei/HiSiliconはじめ米国商務省のエンティティリストに載った一部の中国企業はN3そのものにアクセスできない。

なお、IntelがTSMC 3nmプロセスの生産契約を急ぐのは、ファブ18Bの3nm生産能力の枠を先に埋めてしまうことで、Intelのプロセス開発の遅れを尻目にTSMCの先端プロセス採用で急成長するライバルAMDに3nmプロセスの導入を遅らせるためではないか、といううがった見方をする台湾半導体業界関係者も少なくないようである。